2022年10月 街角サロンご報告

  今回の参加者は、シリコン完成(経過9年)1名、自家組織完成3名、エキスパンダー挿入(自家組織再建の予定)1名でした。

・およそ9年前に都内のベテラン医により、シリコン再建をした患者さんは、今回、医師から「患部にトラブルがなければ、10年経っても入れ替える必要は無い、しかし年に一度の検診は必ず受けるように」と指導されたそうです。

当時の主流であったアラガン社のコヒーシブシリコンを10年入れておくと、悪性リンパ腫に罹る恐れがあると、一時大きくクローズアップされましたが、確率からすればさほどのものではないのです。ただ、年に一度の検診は、皆様、怠らないで下さいね。

・自家組織再建の場合、オペに通常7、8時間かかるため、麻酔が切れたあとの吐き気に悩む患者が少なくありません。48時間絶対安静という処置のため、腰痛のリスクもあります。筆者自身、オペを1ヵ月後に控えて恐くなり、口実を作って逃げ出したい心境でした。そのような電話相談が時々あるのです。それは「やっぱり止めたいから、マイナス要因を聞かせて欲しい」という動機ではなく、「恐いけれど手術は決行したいから、不安を取り除きたい、励まして欲しい」というニュアンスでした。

経験者の集まりに出て、具体的な備えを確認しておくのは得策です。幾度となく書いていることですが、参考になるのは以下のような事です。

例1) オペの前に患部の皮膚に化粧水、クリームなど塗り込んでおくのは必須。またオペの後、傷が乾いてからも、同様の処置が必要である。体全体がストレスを受け、それが皮膚の縮みに繋がり、再建のバランスが崩れることもある。市販のものなら「バイオイル」がお勧め。傷跡が早く消える。しかし残り物、試供品のクリームでも効果は十分。

例2) 麻酔の管を喉から抜く時、口腔内に傷が付き、往々にして口内炎が出来る。軟膏を用意しておくと良い(定評のある「ケナログ(商品名)」は販売中止となった。現在は「テロシン」がよく効く。但しあらかじめ医師の許可を得て欲しい。感染症による口内炎には危険です)。

3)48時間安静が解けた後、トイレまで歩行するとき、浸潤液を溜める容器を三つ四つぶら下げて行く事になるが、これが案外、邪魔で重い。パジャマに大きめなポケットがあれば便利である。斜め掛けのトートバッグを用意しておくのも良い。

 国内の乳がん発症率は9人に1人となりました。この十年、シリコン再建が保険適用になって以来、自家組織より圧倒的にシリコンが多くなった、と言われますが、サロンに参加する患者の割合は、シリコン、自家組織と半々です。個人のライフスタオル、仕事を休めるか否かなど、周囲の理解にも因るのですから、サロン、患者会、オンライン講習会などを活用し、悔いのない方法を選んで欲しいです。

最後になりますが、今回の出色はとても豊満な患者さん(バストだけが豊かで他はスリム)が、片側を全摘したあと、健側の乳房から移植して、好みのサイズのお胸をゲットしたこと、その見事な作品を、体感会で見せて下さったことでした。

余り詳しく書くと個人が特定されるので控えめにしておきますが、大変難しい手術です。その手技が出来るのは現在、国立富山大学付属病院の形成外科教授、佐武利彦ドクターだけです。

思えばこのサロンを始めてすぐに、私の心強いアドバイザー、Yさんが都内からやって来て、研修会を開いて下さいました。その時にこういう方法もあるのだ、と教えてくれたのが影響大でした。その後、某患者支援組織が開催した、佐武ドクターの講演会にて質問の手を挙げ、健側からの移植について、そのリスクや条件などを詳しく教えて頂きました。それが今日に繋がったのです。Yさんの善意と協力、患者支援組織の輪によって、どれだけ多くの人がそれぞれ人生を刷新出来たことか。シャロン前橋は地方の小さな発信元として、感謝を忘れてはならないと思います。一人の人が明るくなると、そこから発せられる「気」によって周囲も変わって来きますから。

 しかし落とし穴もあります。情報の具体例が求められれば、おのずと個人の経験が主観的に語られます。私は拙著「懐かしい月を抱いて-私の乳房再建-」(上毛新聞社刊)に記録した経験が、普通の自家組織再建より難事業であったため、患者さんを不要に怖がらせるのではないかと心配です。

患者さんは形成外科医の解説本などを読み、サロンで見聞きする内容を取捨選択する準備もまた、必要です。昨今の医療チームも、患者がきちっと勉強しているのを前提に、再建を勧めているのではないでしょうか。

あちょさん、美味しい沼田の林檎を皆にふるまって下さってありがとう。しゃきしゃきして甘く、美味しかったこと。

サロン後の久々のお食事会、思い切り楽しみました。

 

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