故、近藤誠医師が見ていなかったもの

 「がんは放置すべし、手術、抗がん剤など不要」と提唱し、多くの患者さんを揺さぶった近藤誠医師が亡くなりました。報道によると出勤途中に急性心不全を起こし、逝かれたそうです。

この医師は自分ががんに罹ったら、持論通りに切除も薬も拒否し、放置して全身転移の苦痛の内に終わりを迎えるのだろうか、と思っていましたが、ご自身はがんには罹りませんでした。

サロンでは一時期、治療に疲れ切っていた乳がん患者達が、その後、元気を取り戻して新たな人生のチャレンジを始める様子を、始終見ます。

近藤医師が実際に患者を診ていたとは思えません。

かの医師の主張は初め理に適ったものでした。すでに全身に転移している患者の臓器をごっそり切除したり、息も続かなくなっている末期患者を抗がん剤でさらに苦しめたりという過剰診療に、異を唱えたのです。また、若い頃の近藤医師は、国内では珍しかった乳房温存手術を推奨した実績があります。乳房をほとんど原型のまま温存し(確率からすれば可能性は少ないのですが)、再発もしなければそれに越した事はないのです。問題はしこりの位置と大きさ、乳腺外科医の腕なのです。

話しは戻りますが「人はその能力ゆえに身を滅ぼす」という某作家の箴言通り、信奉者が増え、もてはやされるにつれて近藤医師の言うことが極端になって来ました。

彼が亡くなってもその著書が消えるわけではなく、早期のがん患者さんが命を落とすのが心配です。

 

サロン活動を通して見る限り、昨今は聡明な患者さんが増えてきました。『再建』には専門用語が付きものですが、初参加の段階でそれを熟知しているかどうかは問題ではありません。情報を取り、考え、主治医と相談するという段取りが上手なのです。この方々は仕事場でもテキパキと優秀なのだろうと推察します。

その上、個別に話してみると乳がん以外にも多くの持病を抱えて、日常を工夫して生きてこられた方も少なくなく、教えられることは豊かにあります。

 

「人のためになることをしたい」と純粋な願いで活動を始めでも、裏切られ、逆恨みされるリスクは常にありました。しかし当方とて、知らないうちに人を傷付け、理不尽な思いをさせてきたに違いない、という省みと謙虚さは、欠かせません。それ無しには続けられないのがボランティアです。

新型コロナが終息し世の中が落ち着いたら、シリコンブームの頃に再建した方々が、悪性リンパ腫を防ぐために入替えを考え始めるでしょう。改めて自家組織でやり直したいと願うケースも増え、情報のニーズは方向転換するかもしれません。

これまで守られてきたサロン活動が今後も細く長く続いてゆきますように。

予定では次回は10月8日(土)、街角サロンを開催できると良いのですが。

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