最前線(自家組織の修正オペ、乳頭作製、脂肪注入)の体験者より
今回も貴重な体験談を送られました。感染拡大の網目をぬって手術に踏み出した三人の再建患者さんのケースです。情報交換の貧しい昨今、ブログをご覧になる方々のお役に立てますように。心からの感謝と共に 、発信させていただきます。
------自家組織再建:お胸の修正手術の患者さんより------
こちらの患者さんは穿通枝皮弁の再建でした。
今回は左右対称になるよう、患側の過度な膨らみ(腋)から脂肪吸引をして形を整えました。
術前に、吸引部分を黒のマーカーで塗った写真を見せていただきました。自然な乳房の腋にはくびれがあります。それを再現すべく、工夫されたオペでした。自家組織再建は体に負担の重いものですが、このような細部の工夫が出来る強みもあります。
吸引した部分は固くなり、2.3ヵ月は腫れると言われますが、さほどでも無いとのこと。下着はワイヤー入りを当分控え、ソフトブラを付けるよう指示がありました。
体質によって様々なケースがありますが、この患者さんは皮膚が弱く、 安静にしていた間、腋の部分に褥瘡が出来てしまったそうです。昔「床ずれ」と言われていたもので、気を付けていても、あっという間に出来てしまうのですね。が、今は塗り薬とテープで快癒するものになりました。また、血栓の出来やすい体質なので、あらかじめCTを撮り、体内に血栓が潜んでいないかどうかを調べてからの手術でした。10日間の入院だったそうです。
これから乳輪乳頭の方法について考えるとのこと。一歩一歩、前進ですね。
病院によって可能な術式、方法等が異なるので、シャロン参加者からの情報提供を、今後も大事に活用させていただきたいです。
施術中は医療者達が患者さんの緊張をほぐすために、メスを使いながら面白おかしい話をしてくれるので、患者さんご自身も話の輪に入り、医療者達を笑わせていたとのこと。楽しいですね。場面が目に浮かびます。このような覇気のある明るい患者さんを担当する医療チームも幸せだと思います。
以下、ご本人のメールからの抜粋です。
「手術の最後に先生から「出来ました、見て下さい」と、言われ、出来上がった乳頭を見て思わず「凄い!先生天才!」と叫んでしまいました。(笑) あの時に失った乳頭が帰ってきてくれました。乳頭があると全然胸の雰囲気が違いますよね。でも、乳頭を付けたい人は少ないそうです。
同時間に、別の医師から乳頭再建の手術を受けた女性と更衣室で会いました。70才くらいかな。その人は自家組織で再建し、やはり乳頭を作製したのです。作って良かったとおっしゃっていました。そんなに痛くないし、乳頭乳輪は是非とも付けるべきだ!と思いました。4ヵ月後にはタトゥーで乳輪を作ります」。
この患者さんはガーゼを重ねてドーナツ型に孔を明け、装着しています。1週間、抗生物質の塗り薬を使い、その後、ラボ・Kさんから購入したニップルカバー「ピアニー」を使っています。一年装着すれば、陥没の恐れは無くなります。私もそうでした(時に蒸れるので、たまにドーナツガーゼを使ってみるそうです。けれど非常に使い心地が良く、簡便でお勧めの商品、ラボKのピアニーです)。
スターフラップで作ると、乳頭の先のかすかな割れ目が再現出来る長所があります。健側移植なら陥没しづらくなりますし、いずれにも良い点があります。
以下は彼女よりいただいたメールから、ご本人の許可をいただき、一部抜粋したものです。患者さんが特定されると困るので、メール受診、手術等の日時をここに記す事は出来ません。
「昨日、○○病院の紹介状を持参し、富山まで行って来ました。
佐武先生はお忙しいのもあると思いますが、仕事が早いですねぇ。昨日は13時予約で、1時間15分待っての診察。
P/Cに取り込んだ紹介状の内容を、患者に確認しつつ、先生の所見を隣にいるもう一人の医師に、漏れの無いよう打ち込ませていました。
「エキスパンダー挿入後、手術、再手術、再々手術と、期間が長かった事もあり、内傷が固くなっている。
大胸筋切除、腹直筋皮弁再建、再手術、広背筋皮弁手術、と、4回の手術の傷が層になっているので、まずは初回の脂肪注入で畑を肥やすように患部の環境を整える必要がある。そのため脂肪注入は三回必要になるとのこと。
自分は仕事をしているので日程の調整は簡単ではありません。1回目の脂肪注入を○月始めにすることに決め、逆算すると、遡ってその2ヶ月前に入院し、採血&検査、脂肪吸引をすることになります。
その前に、CTを撮らなければなりませんが、それは元の○○病院にて保険適用でお願いできるそうです。そのための書類もすでに頂いてます。」
以前に取り上げたので詳細は触れませんが、絶対安静を要する「自家組織再建」が三度失敗に終わり、いまだ完成に至らない患者さんの近況です。
普通なら自己憐憫の孔に落ち込み、何年も這い上がれないでしょう。一度お見舞いしたおり、彼女の試練はあまりに厳しい、と感じました。けれどご本人の目に涙を見たのは一度だけです。
退院後、彼女はすぐに闘い始めました。医師を批判することではありません。再建手術のノウハウを医療者レベルで勉強することで、自分の体に必要な方策を徹底的に調べ上げ、結果、富山大付属の佐武利彦医師の脂肪注入を選択されました。
初めての診察、面談で佐武医師に信頼を置くことが出来ました。感性が研ぎ澄まされていたから、真贋を見分けられたのでしょう。
この場合、脂肪注入は幹脂肪細胞です。乳房欠損部は外側の下部ですから、普通の脂肪を入れても定着しないでしょう。無論、保険適用外ですが、がん保険に入っていたので、三度の脂肪注入なら、やり繰り可能、とのことです。
コロナ禍のご時世にあって、まず地元の病院でPCRの検査を受け、陰性の証明書を貰わなければなりません。凄く混み合っているので、苦労されたようです( PCRに引っかかり、予定通りに脂肪注入出来ない人もいます)。
この患者さんは仕事の他にも、二人のお子さんの子育てなど、多忙極める生活を送られている方です。無事に初回の注入を終えられるよう、祈るばかりです。
※尚、地元の病院にて、アラガン社製スムースのラウンド型を挿入した患者さんのご経験を、追って公示させていただきます。
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