アレルギー体質と乳房再建

 先のブログにて、乳房再建術に使われる金属物質について、アレルギー体質の患者さんはどのように対処されているのか、投げかけたところ、シャロンのレギュラーXさんから、大変詳しい情報提供がありました。

ご本人の許可をいただき、メール内容を転用させて頂きます。

 

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 >例えば金属アレルギー体質の患者さんに、エキスパンダーの金属部分はどのように反応するのでしょう。

 

ティッシュエキスパンダーを挿入しているとMRIは禁忌であることを、先日のシャロンで初めて知りました。

 

そうなると、そもそも金属アレルギーを持つ人にとって、エキスパンダーに使われている金属の種類によっては、挿入は危険なのでは?という疑問がわきます。

 

わたし自身、色々なアレルギーを持つため、特定の金属を避けて生活しているので、エキスパンダーを使わない術式を選ばねばならないとしたら、非常に不安と焦りを感じます。

そこでエキスパンダーの素材を調べてみました。素人が調べるには限界があるので100%ではありませんが。

 

画像上では、エキスパンダーの外側に、金属らしきパーツは見当たりませんでした。

しかし生食水を注入する時に針が突き抜けないよう、エキスパンダー内部にニードルガードという金属の板が付いていることが分かります。

(ニードルガード自体はチタンですが、患者の体外から生理食塩液注入部を検知するためのパーツに磁石が使われているとのことです)

 

・ナトレル133ティッシュエキスパンダー

https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/111932/111932_22400BZX00356000_B_01_01.pdf

 

エキスパンダーの金属問題については、メーカーにもよるでしょうが、金属アレルギー体質でも大丈夫なものがありそうなので、ひとまずクリアです(手術のときは担当医とよく相談しないとね)。

 

しかし心配なことがもうひとつ。乳輪のメディカルタトゥーに使用される染料についてです。

 

そもそも染料には、植物の色素や、石油などの化学合成物質から作られる有機顔料と、土や鉱物の天然素材から作られる無機顔料とがあります。

赤味を出すために使われるのが、赤色◯号ならばタール系色素、つまりは石油なので有機顔料。酸化鉄ならば鉱物系なので、無機顔料ということになります。

身近なところでは化粧品(ファンデーションや口紅)ですね。

 

順天堂大学HPの「乳房再建手術について」の項目に、

 

>アートメイクの顔料は一般的な刺青と比べて含有金属量が少ないため、MRI検査も問題なく受けることができます。

 

とありました。含有量が少ないとはいえ金属ということは、やはり酸化鉄なのかなーと。

 

・順天堂大学医学部附属順天堂病院HP

https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/keisei/about/disease/nyubo.html

 

わたしは、タール系色素はもちろん、コチニール色素や植物の紅花色素、また金属ならば鉄や亜鉛やアルミニウムなど、色々なものに反応してしまいます。

ファンデーションや口紅を塗れば発疹と痒み、鉄のフライパンで調理したものを食べれば食道から胃袋にかけてムカムカ感が半日〜一日は続きます。

乳輪形成手術を受けるときは、メディカルタトゥー以外の方法を選ばなくてはなりません。

 

避けるべきものが事前に分かったことは、わたしにとって(アレルギーを持つ人にとって)大きな収穫です。

過敏体質の患者さんはこれから形成術を受けるにあたって、ご自身の体質と形成術に使われる素材をよく調べた上で、選択することをお勧めします。

 

余談ですが、ラックカイガラムシをもとに作られる赤色をラック色素、カイガラムシからのものをコチニール色素といいます。

動物由来の色素であり、化学的に合成された成分よりも安全性は高いと言われています。アレルギーについては、動物性なのでタンパク質が原因らしいです。

コチニールやラックは、蒲鉾やゼリー、お肉の加工品など、多くの食品に使われています(くれぐれも、安全なものなので心配なさらずに!ですが虫です!笑)。

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 これだけ綿密に調べ、信頼の置ける情報発信としての文章をまとめるには、多くの時間とエネルギーが費やされたはずです。Xさん、ありがとう。

 Xさんは、長年ご自分のアレルギー体質と共存されているので、食べ物を選んだり工夫したりするのは苦にならないとおっしゃいます。ただ、他者の(善意の?)言葉に傷つくことは、少なくないようです。

たとえば昨今、お子さんのアレルギーに悩む、若いお母様が多くなりました。「母親が神経質に育てるから、そうなる」「構わずに食べさせておけば、平気になるわよ」などなど、その物言いに、相手がどれだけ傷ついているか、分からないのでしょうね。言われている当人は、「気にしない」と心に決めていても、疲れた時、滅入っている時などは、まるで暴力をふるわれたかのように、それらの言葉が束になってよみがえるのです。

 今は様々な生き方、体質の人々と共存する、多様性の世の中へ舵を切ろうとしています。それは素晴らしいことですが、多様性を認めて、良好な関係を続けるコツとは、相手との距離を上手に保つことです。距離感をつかむには大人にならなければならないし、痛い目に逢わなければ人は大人になれません。

 来年も様々な思いを秘めた患者さんが集い、周囲を思いやりつつ、楽しいサロンを続けてゆくことが出来ますように。切に祈ります。

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