8月ミニサロンの御報告

  多くの病院で乳房再建の進捗度はゆっくりです。今月中にエキスパンダー挿入を予定していた患者さんも、年末までゆっくり構えましょうと医師から提案されるケースがあったようです。形成外科医もまたコロナ患者さんの急増を受け、借り出されるのを内々に了解しているのでしょうか。急ぎたい方は乳房再建専門のクリニックの戸を叩くのも選択肢の一つです。

保険適用されたシリコン(シエントラ製)は日本人タイプのしずく型ですが、サイズに難があると言われていました。最近挿入されたXさんの詳細な情報提供によると、最小のサイズは幅11センチ、下垂部分の厚み4.2センチ、とのこと。それ以上の幅3ミリ、厚み1ミリ単位で大きくなるそうです。

保険適用が待たれるメンター社製についてはさらに大きいサイズのお椀型ですから、ある意味で期待は出来ません。アラガン社が新たに作製しているしずく型なら、小サイズは様々に選べますが、保険適用外ですので費用がかかり、悩ましい所ですね。

今回、見せていただいたXさんの再建作品は、デコルテ部分のくぼみを腹部の脂肪で埋めてあり、なだらかで自然でした。

シエントラ製のシリコンも悪性リンパ浮腫の発生率が決してゼロではありません。780例中、1.4パーセントと僅かながら数字が上がってきているので、定期的な受診は欠かせません。乳がんの治療は「一応、卒業」のハンコを押される日が来ますが、形成外科医にとっては自分の再建作品がその後、長期に亘りどうなっているか、気になるようです。

 ところでシリコン再建がブームだった56年前に挿入した、アラガン社のシリコンによる悪性リンパ腫の発生が報告されました。二例目です。

岩平佳子ドクターの「ブレストサージャリークリニック」HPに掲載されましたので転用させて頂きます。

 

「日本で2例目のインプラントを入れた方の悪性リンパ腫が学会に報告されました。
インプラント挿入後、5年。
腋窩と側胸部に腫瘤が発見されて、そこにBIA-ALCLの細胞が見つかったそうです。
インプラント周辺から細胞は見つかっておらず、正直、ホントにインプラントのせい?と違和感を感じざるを得ません。ただ病理と腫瘍内科の先生がそのように診断された以上、方針に則って治療されているようです。
この方もきちんと検診をされていたこと、腫瘤ができたこともすぐに乳腺外科に相談できたことで早く見つかりました。
恐れることはありませんが、定期検診はとても大切です。」

 まだまだ出口のはっきり見えないコロナ禍の世の中ですが、いつか怒濤の如く、乳房再建ブームが再燃するでしょう。その日に備えて地道な勉強を続けたいと思います。

コメント