乳がん歴15年、人生の宿題をまた一つ。
乳がんの全摘手術をして十五年、乳房再建をして八年半になります。
治療を終え、活動的に生きるようになり、やっと実ったものがあります。
最愛の人に巡り会った、スキューバダイビングを覚えた、日本百名山を踏破した等、何を実らせるかは人それぞれですが、私の場合は、旧知のTさんの評伝を著わす事でした。「事実は小説より奇なり」の通り、25年間パプアニューギニアで働いた元宣教師の希有な軌跡でした。
若い日に、夫とよちよち歩きの子供たちと村に入り、十年後には夫を病気で失いましたが、宣教師の仲間や村人に助けられ、志をまっとうしました。けれど六十三歳を過ぎて日本に帰ってきたTさんを待っていたのは、やはり安穏な日々ではなかったのです。
私にとって乳がんの告知を受けたことは、文筆に熱中するのを促しました。書いている物が本になった頃、自分はもうこの世にはいないだろう、と思いつつ、初めの一冊。
生き延びて福祉施設の立上げに加わり、昼休みにはマックで乳房再建の原稿書きをして一冊。
そしてTさんと出会い、人柄の奥深さに打たれ、その人生を再生してみようと取材を始めました。
人生は思い通りにはならない。どんなに苦しんで努力しても扉が開かない事もあれば、備えられていたかのように次々に道が拓かれる事もある。不幸だけを産む出会いもあれば、長い幸福の連鎖の始まりになる出会いもある。それも乳がんという宿痾が教えてくれました。神様に課された宿題にがむしゃらに取り組んだ結果です(「シャロン前橋」を立ち上げたのも宿題の一つでした)。
拙著「大洋を行く宣教 -パプアニューギニアでの聖書翻訳-」この度、ようやく上梓する事が出来ました。置かれるのは限られた書店ですが、書店で発注していただくか、アマゾンにも出回っていますので。お読み下さる方がいらっしゃれば幸いです。
コメント
コメントを投稿