再度、「幹脂肪細胞」による乳房再建について

 

20215月、某「脂肪注入再建専門の自由診療施設」のウェブ学習に参加しました。重複する部分もありますが、113に公示した「脂肪注入による乳房再建のリスク」に補足させていただきます。

 

・普通の脂肪(培養したものではない)は生着率は15-30パーセント

 

・培養CAL(遠心分離機、濾過機にかけて分離させ、凍結しておいた脂肪幹細胞:以下、CAL)は、普通の脂肪に混ぜ、大胸筋の下に注入する。培養しても、幹脂肪細胞の数は人によってまちまちである為、定着率にも差がある(一般に7割程度とされています)。

 

・CALなら放射線をあてた患部でも血流を良くし、血管再生できるので、再建術に希望は持てる。(放射線をあててから1年以降が望ましい)

温存乳房の場合、欠損が乳房の上部にあるなら、CALを注入して美観を作りやすい。下部は注入量がたっぷり必要なので、難しくなる(この部分、温存か全摘+再建かで迷っている患者さんは思案のしどころだと思います。しこりがどの位置にあるかで温存後の変形が著しく異なるのは、今では良く知られています。乳輪乳頭より下部、あるいは側面に寄っているしこりは、温存の切除後、整容性を保つのは難しい。この点は乳腺外科医によく確認してみて下さい)。

 

・全摘の場合、丸ごと再建するには、3回のCAL注入(三ヵ月間隔で施術する、つまり一年はかかる)が必要。1回の施術は日帰りか一泊二日でオペ可能だが、その後三日は自宅で静養してほしい。

一週間後には仕事に復帰している人が多いが、痛みはある(寝込むほどではないが、交通事故にあってガクガクした感じの痛み、という証言を、実体験者から聴きました)。

「CAL」という用語を示したからには、その施設が横浜のセルポートクリニックであることをお分かりの方も多いでしょうね。年間100例ほどこなしているそうです。

 

・「乳がん切除+エキスパンダー挿入」の同時再建をした後、セルポートへ来て貰って構わない。挿入後、半年くらいに経ってからが良い。シリコンや自家組織を使う場合、生理食塩水を足してゆき、エキスパンダーで皮膚をぱんぱんにふくらませる必要があるが、脂肪注入の場合、それほどふくらませる必要は無い。

エキスパンダーから水を抜きながら、少しずつ脂肪注入をしてゆく。

脂肪注入による再建乳房も、自家組織なので、加齢と共に下垂する。

1月に公示したここでのブログ「脂肪注入による乳房再建のリスク」と併せてお読みいただければ、さらに分りやすいと思います。

 

但し、繰返し記していることですが、この再建方法は保険適用ではありません。

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