コロナ禍にあって、歪んでいる再建事情
乳房再建については、新型コロナ禍にある現在、先の見えない不安、もどかしさを医療従事者と患者の双方が感じているのでしょう。温存手術を勧める乳腺外科医が増えています。
その後、局所再発したという例も、必然的に多くなっています。
だからと言って、「全摘+エキスパンダー挿入」の同時再建を、ここでお勧めしているわけでは、決してありません。
以前、このコラムに「群馬オンコプラスチックサージャリー研究会」(きちんと乳がんを治療したい乳腺外科医と、乳房再建する形成外科医が、情報交換し研鑽を積む会)は現在、機能していないのでしょうか?と、投げかけた事がありました。
その後、信頼出来る方面から、現在は疫病流行のため会合を持てずにいるが、相応しい時期が来たら是非、再開したいと考えている、という意味のご回答をいただきました。
再開の機会が一日も早く訪れるよう願っています。何故なら、以下のような問題も頻発しているからです。
それはふさわしいシリコンサイズの無い、とても豊満なお胸の患者さんでした。担当の乳腺外科医は、シリコン再建を前提にエキスパンダーを入れる事を、強硬に勧めたのです。そのサイズに見合った大きなシリコンなど、この世に無いのに。
その逆の例もありました。あまりに慎ましいサイズでは、これまた、そぐうシリコンがありません。シリコン再建で綺麗になる理想は200CCです。
適当なシリコンを入れてしまったら、その後、豊満な健側を縮小するか、あるいは小さい健側を脂肪注入で豊胸するか、いずれにしろ左右対称にするまでには大変な行程が必要なのです。
なのに、何故、乳腺外科医は安易に同時再建を勧め、自分の腕でエキスパンダーを入れたがるのでしょう。入れてしまえば、あとは形成外科医に「丸投げ」でしょうか?
「再建先進地域」では、このようなケースはあり得ない、と首を傾げますが、これが群馬県内の実情です。
乳房再建の全貌を知らない乳腺外科医が、何故、乳がん切除と同時にエキスパンダーを挿入する資格があるのか、前々から不思議でした(上手に挿入出来る、素晴らしい乳腺外科医も、勿論いらっしゃいますが)。
ある患者さんは「再建先進地域」で、がん切除と同時にエキスパンダーを入れ、麻酔から覚めた時、乳腺外科医と形成外科医がベッドサイドから一緒に「大丈夫ですか」と声を掛けてきた、とのこと。羨ましい話です。そこまで行き届いていなくても、せめて同時再建しようとする乳腺外科医は、形成外科医にあらましを打診し、相談しておくべきでしょう。それをしていない臨床例が驚くほど多いのです。
再建事情が凍結しがちな昨今、水面下で多くのトラブルが発生しています。この感染症が落ち着き、人の行き来が自由になれば、泣き寝入りしていた患者さん達の不満は露わになるでしょう。
私は告知を受けてから色々調べ、わけがわからなくなってしまったので、きっぱり全摘する、という選択肢を採りました。再建はそれからでも出来るという提案は、この分野での長い間の常套句です。
現在は通常の乳がん検診を受けられず、不自由している患者さんも多いのが実態です。病院の代表電話が通じないのです。
毎年夏に検診を受けていたのですが、今年はようやく2月末に予約が取れました。
検診から足が遠のき、転移していまう患者さんもいるかもしれません。
パンデミックの収束が見えない現在、まず病気の根治に集中し、あとから整容性をゆっくり考えてみませんか?
コメント
コメントを投稿