2020.2.8 街角サロン 臀部ドナーの再建成功例 ご報告


参加者の内訳は再建完了者5名、再建途上にある女性1名、再建検討中の女性3名、エピテーゼ技師(ボランティア参加)1名でした。

 

本日のメインの体験談は臀部(お尻)の上部から組織を移植し、再建したHさんです。乳輪乳頭を残した皮下全摘+エキスパンダー挿入でした。初めはシリコンを入れるつもりでしたが、痛みはなかったもののエキスパンダーの異物感が不快で、自家組織再建を選んだそうです。

別の患者さんは何ら違和感無く、エキスパンダーのまま一生過ごしても良いと思うほど快適だったのですから、様々です。

Hさんはお若いので、妊娠、出産の可能性を残せるよう、腹部を避けました。太ももやお尻から移植するとしたら、佐武利彦Dr.より他、選択の余地はありません。混んでいるのは解っていたので、全摘手術の三ヶ月後に電話で外来を申し込み、その八ヶ月後に外来受診がかないました。そして外来から数えて一年八ヶ月後に再建手術となりました。エキスパンダーを入れて二年と八ヶ月待ったことになります。

完成は見事なシンメトリーでした。

臀部をドナーにした場合、傷の辺りに水が溜まりやすいようです。アフターケアのため、今もタイトなガードルを履いています。

最近は背がすらりとして乳房に高さのある、スタイルの良い患者さんが増えている、と聞きますが、Hさんはまさのその典型で、お胸はほぼラウンド型でした。臀部から採取した皮膚を折り畳んで乳頭直下に入れ、高さを出したそうです。

手術前にジムで脊柱起立筋を鍛えておいたおかげか、腰痛の辛さはほとんど無かったとのこと。脊柱起立筋と腰痛予防の関係ははっきりしていないようですが、筋肉を付けておいて無駄はないのでしょう。

術後八日で退院、一ヶ月後に職場復帰。デスクワークですが傷は臀部の上なので気にならないそうです。ただ、都内への通勤なので満員電車では、お胸やお尻をガードするのにハラハラですね。

完成したお胸は切開の傷がアンダーラインに来るよう処理してあるので、まことに自然です。佐武Dr.から感想を聞かれ、見事な左右対称にびっくりしました、と応えたそうです。ドクターも嬉しかったでしょうね。

 

全摘後、抗がん剤をやり通した患者さんが、お肌がつやつやで綺麗になっているので驚きました。抗がん剤治療中は何をどうしても、美貌は翳ります。しかし必ず元に戻りますから治療中の方は元気を出して下さい。

 

シリコン撤収劇のおかげで、再び温存手術が増えています。全摘と温存とを両方経験した患者さんからお話を聞いたのですが、温存の方が当然楽だった、というケースもあれば、温存後、乳房内部に痛みが残った、断端陽性と出たため、結局全摘したが、その後痛みはなくなったというお話も、今日聞きました。

患者さんの体質により、実に様々なのです。サロンで「こうした方が良い」と申し上げられないのはそのためです。が、某病院では患者さんが全摘を望み、幾度もはっきり訴えていたのに、医師の勧めにより温存で押し切られた、というケースがあります。それはおかしいのではないでしょうか?

美しい温存で治療を完了した例も沢山見ています。どのような形で残るかはしこりの大きさ、位置、お胸のサイズによるのでしょう。それは誰よりも医師がご存じではないでしょうか。

 

さて、今回のサロンで魂消たのは、12月ブログで報告した再建トラブルのXさんの精神力です。外柔内剛とはこういう方のことをいうのかしら。
患者向けの解説書では満足出来ず、形成外科医の読む研究書を数冊購入し、勉強されています。もうこれは読み終わったから、と一冊貸していただきました。こんな凄い人に逢ったことがない。

第三者は凄いと感心していられますが、ここまで前向きになるためにどれほど努力を払っているか、想像に難くありません。

 

人の脳には、発想の癖がついているそうですね。鬱々としている方は医師やカウンセラーにかかり、気持ちを楽にするお薬を処方してもらうのが基本ですが、お薬だけでは治らない。自らに「認知療法」を課し(年配者の罹る認知症のことでありません。発想回路を自分でコントロールする積極的な認知です)、努めて発想の回路を明るい方へ向けてゆく必要があるのだそうです。

「はじめての認知療法」大野裕著 講談社新書:お勧めです。かつてこのブログで紹介したかもしれませんが、最近読み返し、とても解りやすい良書だと思いました。

 

昨日は小さな庭の梅が、一気に開いていました。優しい色合いの椿が次々に大輪を咲かせています。お水を上げる以外、何もしていないのに。

 

次の街角サロンは4月11日(土)14時~17時です。

皆様に逢うこと、また初対面の方に出会えることがとても楽しみです。

コメント