【予防切除】が保険適用に-----悩みの森は未だ深く----


 
 乳がんを患っている患者さんのうち、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(以下、HBOC)と判明した場合に限り、健側の乳房を予防的に切除することが奨励されています。その手術に公的医療保険が適用されることになりました。来春4月からの施行です。

12月14日サロンの当日、会場準備をしながら上毛新聞にその記事を見出しました。そしてあちょさんに電話でお願いし、全国紙を買い集めてもらいました。

以前、日本乳がん学会の診療指針に「遺伝性の乳がん患者には、予防切除を強く推奨する」と挙げられた時、何十万円もかかる手術なのに? と戸惑いました。しかし昨年末までにその高額な「予防切除」が、580件行われていたそうです。HBOCの患者さんが自分の将来をどれだけ憂えているかを、その数字が表しています。 

遺伝子検査や遺伝子カウンセリング、定期検診なども保険適用になります。経済的にも心理的にも楽になるでしょうし、HBOCの患者さんの生存率はさらに上がるに違いありません。

しかし、ややこしい話ですが前述した通り、保険適用の対象になるのは、すでに乳がんか卵巣がんを罹患していている患者さんのみ、です。

 家族に乳がん、卵巣がん患者が多く遺伝が疑われていても、現段階で罹患していなければ、保険の対象にはなりません。

その上、「予防切除」に加えて乳房再建を望む場合、再建の費用にも保険を適用する、とはどこにも書いてありませんでした。つまり、健康な方の乳房を、再建無しの前提で切除することだけが、強く推奨されているのです。  

 もちろん一番大切なのは命、次が再建です。ここに明記できるのは、遺伝子検査、遺伝子カウンセリング、定期検診の保険適用を最大限活用して、まず自分の命を守っていただきたい、ということです。両側の乳がんを経験している方、特に異時性の両側乳がんを発症した方は、卵巣にご注意下さい。卵巣がんに侵された方も同様に、乳がんに気をつけて下さい。出来れば2020年4月以降、公的保険で遺伝子検査をし、HBOCかどうかを確認していただくのが良いと思います。

若い世代で発症するケースの多いHBOCですが、さらに気に掛かるのは、妊娠中の乳がんの罹患、または授乳中の発症が増えていることです。乳腺炎と誤診されやすいこと、発症したらホルモンバランスの影響で病気が早く進むことなどが心配です。しかし早まらないで下さい、幾度かこのブログにも書いていることですが、「妊娠中の乳がんの罹患、イコール、即刻人工流産」ではないのです。母体とお腹の赤ちゃんを両方救うことは可能になってきています。セカンドオピニオンが必要な患者さんには、症例数の多い聖路加をお勧めします。

 
 シャロン前橋は再建の情報交換の場ですから、このような話題に時間を割くには限りがあります。

今後、HBOCの方々のために詳しい勉強会が、患者会、市民講座などで開催されることを、僭越ながらも切に願っています。

シャロン前橋へのご連絡は hdnfn138@yahoo.co.jp まで。

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