2019年8月10日 サロンのご報告


今日は初参加が4名。シリコン、エキスパンダーの回収については皆様、すでに対処法を固めていました。シリコン留置中の人も、エキスパンダー挿入中の人も、乳がん全摘手術後間もない人も、冷静に[待]ちの姿勢です。

 勉強会では先のブログに書き切れなかった事情に触れました。

・シリコン挿入故の悪性リンパ腫(以下、BIAAKCL)発症率は、アラガン社製品が他社製品の6倍であること。

・発症率は地域別に差があり、オーストラリア・ニュジーランドが多いこと。

BIAAKCLは普通の悪性リンパ腫と異なり、血液検査では発見出来ない。MRI、エコー、水を抜いての生検となる。定期検診の他に、自分で「しこり」「変形」「発赤」「痛み」「急に大きくなっている」「水が溜まっている」等の異変がないかどうか日々、確認すること。

・スムースタイプのエキスパンダー、シリコンは今後も保険適用品として市場に出回るが、体内で滑りやすく時代遅れの再建となる。自費で輸入するとしたら、メンター社、シエントラー社のザラツキが少ないものが好ましいかもしれない。しかし何としても1年くらいの間に、これらの製品が国内で保険適用されて欲しい。でなければ、患者は自家組織の手術に殺到し形成外科医も体がもたないのではないか。さらに持病のある患者さんが自家組織を強行し、後の合併症に悩むことになりかねない。

・現在問題のないシリコンを抜いて、別のシリコンを入れるとしたら、それには保険は適用されない。医師とよく相談して欲しい。

・脂肪注入について----保険適用が待たれる----

脂肪肝細胞を用いる定着率の良い脂肪注入は、プライスが安価になる傾向。当初300万円かかったが、現在は200万円程度。インプラントを抜いて、脂肪注入する方法も可能です。 
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ともかく、待っていれば新たに良質なエキスパンダー、シリコンが保険適用になるに違いないから、大騒ぎすることもない、という所で勉強会は落ち着き、参加者の近況報告です。今回も貴重な症例が並びました。

・ホルモン療法中のシリコン再建

ホルモン療法を始めて間もない頃は、女性ホルモンを抑える働きに体が慣れていないため、全体に体がションボリする傾向にあります。それが健側乳房の形にも現れます。その段階で左右対称の再建をすると、体調が元通りになって健側の形が再び元気になったとき、左右差が生じてしまう。

話を判りやすくしますと、ホルモン療法で体がヘタってしまう → 健側の乳房が小さく下垂してしまう=小さく下垂した乳房に合わせて、シリコンを入れる

→ ホルモン療法に慣れてきて健側の乳房が張りを取り戻し、大きくなる 
→ シリコン側が小さく、左右の差が目立ってしまう。
※必ずこうなるというわけでありません。

 

ここまで顕著な例は希少かもしれません。が、そうなった場合、対処には3通りあります。
①新たな形のシリコンを入れ替える。
②エキスパンダー挿入からやり直す。
  ③そのままにしておく。

 一番綺麗に仕上げるには、手間ではありますが、②です。当事者のKさんは②を選択し、現在、エキスパンダー挿入中です。シリコン回収に踊らされず、今後についてはゆったり構えています。

乳輪乳頭を作成する前に現れた症例なので、その点、ラッキーでした。乳輪乳頭を作ってからでは、乳房の土台が動くので「だるまの目」が彷徨います。

再建は段階的に進めるものなので、こうした生(なま)の症例は、患者サロンでないと滅多に聞けません。サポーターとして共働して下さる参加者のリポートは、患者さんにじかに届きます。

次は自家組織のオペ後、絶対安静中に肺に血栓が飛んだ患者さんの経験談です。

安静時間が解かれる頃、大事をとって血液検査をしたところ、血栓の数値が赤信号を発し、HさんはICUというお大事箱に入れられました(再建は無事終了、その後発熱したものの、もう大丈夫、との知らせに喜んでいた私は、ご家族からの代理メールが届いたとき、心臓が止まりそうでした)。



Hさんの自己分析によると、再建手術前、片付けておかねばならない仕事が多く無理を重ね、遠距離出張で新幹線に長時間乗って血栓の出来やすい体調になっていたのではないか。さらに運の悪いことに血栓を防ぐため足にかけられたローラーのボタンが外れていたのでした。ICUでは息苦しい自覚症状があったそうです。

これもまた現代女性にとって、侮れない症例です。自家組織の場合、仕事を休む期間も長くなるので、術前につい頑張ってしまうのです。自家組織の移植は大手術です。くれぐれも無理をせず、体調を整えて臨んで欲しい、というHさんのお話しでした。

初参加の方の悩みについては、セカンドオピニオンを勧める声が複数上がりました。解決のヒントが得られたとき、ご本人の了解を得た上で、顕著な例として内容を明かせるかもしれせん。

お盆休みに突入したので、行事が多かったようです。にも係わらず駆けつけ、再建の患部を見せて下さったSさん、Xさん、誠意あふれたご協力に感謝します(Xさんは臀部からの自家組織移植でした)。

また10月の街角サロンで詳しくお話しを聞かせて下さい。

この日は盛りだくさんで時間が足らず、ぴあサポぐんま主催のゲノム医療講演会等の案内に、十分な時間を割けませんでした。

次回のブログでご紹介致します。

次の街角サロンは

ウーマンキャンサー(女性限定・あらゆるがん種の患者さんが対象です)

914日(土)14時~16

高崎総合福祉センター ボランティアルーム1

シャロン前橋(乳房再建の話題です)

1012日(土)14時~17

群馬県立図書館3階研究室

 
お盆を過ぎる明け方は涼しくなります。冷房はタイマーを使い、体を冷やしすぎないように気を付けましょうね。

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