4月の街角サロン 勉強会のご報告
4月のサロンでは、初参加が4名でした。
勉強会のテーマは「乳房喪失後に起こる、体の変化について」。 お話し下さったのは、25年前に乳がんを罹患されたXさんです。風邪を引いたのをきっかけに医師から乳がんの検査を勧められたのが、早期発見のきっかけでした。再建という選択肢が今ほどポピュラーではなかった時代でもあり、すでに子育てを終えていた40歳台のXさんは切除後、そのままに過ごされました。
寝るとき以外は常に補整下着を付け、重みを作って体の左右のバランスを保っていらしたそうですが、にもかかわらず、4,5年後に腰痛になり、腰から足へのしびれを覚えるようになったのです。リンパ浮腫を避けるのに重い物は片手でしか持てない、この影響は小さくありません。Xさんは側わん症(背骨が片側に傾く)を発症し、やがて50歳代で脊柱管狭窄症が持病となりました。残った健側の乳房が豊かだったこともあるのでしょうが、サイズに寄らず、バランスを失った体は目には見えないながら、相当なストレスを感じているに違いないのです。
全ての乳がん患者さんに再建をお勧めするわけではありませんが、迷っている方の判断材料になれば幸いです。年齢を重ねれば、不具合を調整するため、鍼や整体にかかることがあります。でもXさんのケースは全摘後のアンバランスゆえ、日常生活に支障が出るようになった一つの例として、ご本人から直接お伝えいただくのが良いと思い、今回お話をお願いした次第です。「乳房再建は整容性(見た目)」のためだけではない、とXさんは結びました。「良い年をして何故、再建なんか」という第三者の言葉を払いのけるに十分でした。長年、がん患者さんのサポートをされているXさんは、予定通り全ての論点を網羅して15分で話を締めくくりました。さすがです。有り難うございました。
さて、乳房再建の具体例の報告です。
強いひきつれと陥没が出るようになったことが気になり、再建手術を受けました。
温存の場合、放射線をかけているため、血管を含めて組織は固くなっています。難しい再建手術になるのは医師が誰よりも判っていたはずです。エキスパンダーを入れてゆっくり慎重に皮膚を伸ばすか、皮膚ごと接ぎをあてて乳輪乳頭の位置を矯正するか、どちらかの方法を取るのが一般的ではないでしょうか。パッチワークになるから皮膚移植はしたくない、との医師の考えでしたが、いきなり組織だけを持ってきても皮膚が足らなければ十分な膨らみは作れないし、乳輪乳頭の位置など矯正できないのでは……。
Yさんは手術して下さった形成外科医の立場を傷つけないよう、自分の不勉強に責任があったと謙虚に振り返っていましたが、この仕上がりについて、担当医自身はどう考えているのでしょう。
再建をやり直そうとしているYさんは勇気ある方です。
再建の失敗で気持ちがズンと落ちてしまい、再建した自分自身を愚かだと考えてしまう、そのような患者さんが多いと聞きます。表に出てこないだけで、実は相当数の乳がん患者さんが、悩んでいるのではないでしょうか。
もう一つお聞きして辛かったのは、温泉が大好きなYさんが、物珍しそうな視線に執拗に追われ、楽しめない経験をしたということでした。
今では12人に一人が罹患すると言われている病気です。「ああ、この人も罹っていたのね」と了解したら、必要以上には見ないのが大人の作法ではないでしょうか。手術痕のある人が一緒にお風呂に入っていたとて、それが何だというのでしょう。じろじろ見るのは見る人の無知が原因です。お胸のことに限らず、平素、やけどや皮膚病の顔の人と向き合って話す時は、その人の目だけを見て話せば良いと思います。
県外から来て下さったYさんですが、出来れば今後のセカンドオピニオンの結果、どのような道を辿ってゆかれるのか、詳細に教えていただければ助かります。これからもどうぞよろしくお願い致します。
そして待ちに待った自家組織再建、Sさんの術後二ヶ月のお胸の披露です。まだテーピング中ですが、本当に綺麗な仕上がりでした。アンダーラインが甘いのは術後の腫れがあるからでしょう。腫れが引けば、組織はゆっくり下垂するので健側と対照になるのでは、と思います。Sさんは県内の病院で施術されたので一層、嬉しく感じました。主治医の形成外科:Mドクターはそもそも乳房再建の専門ではなかったはずですが、数年前に赴任してきたら大忙しで、乳房再建の新たな技術についても名医を誘致し、熱心に勉強されています。このような医師が長く地元の病院に定着して下さるよう、祈らずにいられません。
クリニックや病院の評判は、スピーディに変化します。医師の転勤が多く、信頼して任せられると思っていた医師があっという間に姿を消すケースがあるからです。
また、1,2年前まで同時再建(切除+エキスパンダー挿入)をしていた病院が、今は二次再建しか受け付けていない という事もあれば、この半年のうちに同時再建を始めた病院もあります。このブログに病院名、医師名を明記すると、一年後にはどうなっているのか判らないので、慎重にならざるを得ません。再建事情がこうまで流動的なのは乳がん患者さんの急増が止まらないこと、県内の乳がん治療、再建治療がもの凄い早さで動いているからかもしれません。
がん闘病は情報戦だと言われますが、情報は一度キャッチしたらそれで終わるものではありません。新たな変化に敏感でいるためにも、患者サロンや患者会は孤立せず、横のつながりを大事にして行く努力が必要だと、強く感じました。
次回のサロンは6月8日(土)午後2時から5時まで
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