H31 2.9 街角サロンの勉強会,報告


乳輪乳頭の作成は、乳房本体の再建と同時には出来ません。

シリコンの場合、再建後一週間くらいから可能、とされています。

自家組織は少なくとも半年は待つ必要があります。腫れが引き、また若干の脂肪が吸収されてから乳房本体の土台が落ち着くまで、時間がかかるのです(私の場合、初めの23ヶ月はソフトボールのように円く、パンパンでした。少しずつ下垂してゆくのが楽しみでした)。本体が落ち着いてから慎重に健側とのバランス、サイズを測り、乳輪乳頭の定位置を決めるのです。

 

漫画家の佐々木綾乃さんは、自家組織の同時再建(一時一期:乳がん切除と同時に再建する)をなさっています。『乳輪乳頭を残した皮下全摘』+『大腿部からの移植』でした。再建の結果を初めて鏡に映して見たとき、乳輪乳頭がかなり上の方にあった様子ですが、 腫れが引いて落ち着くとちょうど良い場所に収まった、とのこと。その適切な場所を計算してお胸を作るのは、かなりの経験と技術が必要なのではないでしょうか(私も佐々木綾乃さんも、再建主治医は佐武利彦Dr.です)。

乳がん手術で乳輪乳頭を残せれば(皮下全摘が出来れば)、それは幸運だと思いますが、再建する形成外科医のそれぞれの腕を考えると、患者自前の乳輪乳頭をうまく命中させて再建することは至難の業です。つまり、新たに作ればその方が確かな場所に定まるので、乳輪乳頭を残せなくとも、ガッカリすることはないと思うのです。

 

この日の勉強会では、【メディカルラボKhttps://www.medical-lab-k.com/が、シール式の乳輪乳頭、陥没予防のニップルカバーのサンプルを沢山持参してくれたので、説明しやすく、助かりました。

 

勉強会のあとは初参加の方にお話を聞き、その迷いに照準を合わせ、レギュラー達の再建体験を語り合いました。

シリコンにするか自家組織にするかは、多くの人が迷います。このコラムにシリコン再建の過程をレポートして下さったOさんは、現在、猛烈に忙しいので、ひとまずシリコンで再建を済ませておいて、将来じっくり自家組織でやり直そう、という選択でした。また、シリコンで良いと考えていたところが、周りの環境が不思議と整えられ、自家組織で出来る機会が与えられた、というケースもありました。千差万別の境遇において、何が幸いするかわかりません。兎にも角にも決断するのはご本人です。

これまでサロンにいらした患者さんはほとんどが、自分に合った術式をしっかり掴み取っていました。しかし依存心の強い面をひきずったままの人がいたら、ご自身のみならず周りをも巻き込んで混乱し、心も体も収拾が付かなくなる恐れがあります。どこかで切り替え、勇気を持ってご自身の生き方を洗い直してみる必要があるのかもしれません。

残酷ですが、再建手術というものには運が付きものです。その方の生き方が、運不運を呼び込むのではないでしょうか。

 

寒い午後でした。暖房を全開にしつつ、コート、ジャケットを羽織りながらのトークタイム、ティータイム、終わる頃には雪がちらついていました。この街角サロンも満5歳、初めての日も、雪が深く積もっていたのを思い出します。

近々、国内でまだ10症例前後しかない、難解な術式で再建される患者さんがいます。詳細について、きっと明るいレポートが出来るよう祈っています。信じています。

HPにあるアドレスは現在使用していません。ご質問等はhdnfn138@yahoo.co.jp までお願い致します。
 

 

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