遺伝性乳がん患者が『今』を生きること
H30年10月27日(土)『群馬県立がん病院 がんゲノム医療セミナー』を聴講してまいりました。DNAの遺伝子情報は、乳がんに的を絞れば『家族性乳がん』の発症と治療についてのお話です。
米国では遺伝子BRCA1.2に異常のある女性の乳がん発症率症は40~85パーセント、卵巣がん発症率は15~40パーセント。25歳以上は乳腺密度が濃く、マンモでは発見しづらいので『乳房MRI』で検査すると精度が上がるそうです。
現在の県立がんセンターの最新の取り組みを、乳腺科部長の柳田康弘Dr.からお聞きしました。柳田Dr.は異時性両側乳がん(左右の乳がんを時間差で発症した)の患者さんには血液採取による遺伝子検査を勧めているそうです。が、多くの場合、「検査したところで今更?」と固辞されるようです。けれど、何年か後にはその患者さん達が卵巣がんで婦人科に通院していたケースが幾例かあったとのこと。
遺伝子検査で異常が判明した場合、カウンセリングは患者さん本人と共に、娘さん、お孫さんをサポートしてゆくことに狙いがあるのです。お母さん、おばあちゃん、従姉妹等など、アンジーみたいにどちらを向いても乳がん、という女性は、若い内から先進医療の特約がついた民間のがん保険に入っておくのが良いのではないかと、私は思います。
というのも、がんの遺伝子検査が、2019年4月より『先進医療』に組み込まれるからです。産経に記事があったようです。
民間保険で『先進医療』の検査費用を保障してもらえるなら、その後の人生の選択に迷いが少なくなるのではないでしょうか。柳田Dr.がおっしゃるには、BRCA1.2に異常がある場合、四十歳を過ぎて子供を産む可能性が少なくなったら、卵巣を切除しておくことを勧めたい、ということでした。女性の大事な臓器ですから、その言葉は残酷に響くかもかもしれません。でも、乳がんは早期に発見すればほとんど快癒できるけれど、それが遺伝性である場合、卵巣がんで命を落とす可能性がある。乳がんと違って卵巣がんは早期発見のための定期的な検査は出来ないのです。
柳田Dr.の勧めることは、遺伝子変異を持った女性が、自分の体質をベースにした生き方を考える、〔ライフスタイル〕の一つの提案だと思います。何年も前に出した拙著でも同じように書いたのですが、もし結婚相手が早々に現れたら、仕事のキャリアか結婚かを迷うより、発症前に妊娠、出産という女性のイベントを済ませておき、仕事のキャリアップは子育てが一段落してからの第二の人生にかける、という選択も可能かと思うのです。
また、遺伝子変異による乳がんが再発転移した場合 『オラパリブ』という新薬が2018年7月に認可されていることを加えておきます。
抗がん剤といえば、20年前には今の抗がん剤の10倍を投与していたと、腫瘍内科医が告白しているのですね。先日、ぴあサポ群馬のスタッフからお聞きしました。下手な鉄砲の数打ちゃ当たる、そのような治療の副作用を見る医療者の中から、近藤誠氏のような『がん放置の勧め』の持論が出てきたのでしょう。私も10年余り前、赤い悪魔といわれるアントラサイクリン系でヘロヘロになりました。それが上手な鉄砲だったのでしょうか。今では乳がんを患う前より元気です。
今は時代が違うのです。ゲノム検査が『先進医療』に組み込まれたのも初めの大きな一歩で、効果的な抗がん剤治療のみを受けられるようになれば、無駄な副作用による苦しみもなくなるはずです。
サロンにも二十歳台後半の患者さんがお見えになります。「自分にふさわしいのはシリコン再建だとわかりました。再建してから婚活します。ところで、いつの時点で乳がんに罹ったことを話すのが良いでしょうね」との問いかけに、「色々なことを話し合える親友になってから」「相手が心許し、自分の弱みを話すようになったとき」等など、先輩患者達から声かけがありました。
美しく乳房再建した女性は、これからパートナーを見出そうという気持ちに拍車がかかります。少し翳りがあって、笑うと花が開いたようになる患者さんは本当に魅力的です。
ある患者さんが電話で、「一山二山乗り越えて、気張らず僻まず、一日一日を大事に生きている。こういう私って、良い女の条件を十分満たしていますよ」というような事をおっしゃいました。そうだそうだ。
キリが無いのでこのくらいにしますが、『群馬県民の日 記念事業』として、こうした実り豊かなセミナーを開催してもらえるのは感謝なことです。前橋から太田まで、ポンコツワゴンを走らせた甲斐がありました。
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