健側乳輪の『の』の字の移植 プラス雑感


健側乳輪の『の』の字の移植 プラス雑感

前回、書き切れなかったサロンの報告を、と思っているうちに3月も終わり近くになってしまいました。

乳輪の作り方は『鼠径部からの移植』と『刺青』が一般的ですが、もう一つの方法があります。健側の乳輪がクッキリ・しっかりしている場合、それを半分移植するのです。半分とはいうものの、『の』の字に採取し、患側にぐるりと縫い付けます。

患者Xさんの『の』の字の主治医は、群馬県立がんセンターの形成外科医です。

Xさんは同時再建(エキスパンダー挿入)の後にサロンに来て下さり、すっかりレギュラーです。シリコン挿入の後は、左右差が気になる様子でしたが、私たちがサロンで完成品を見た時にはあまりに綺麗で、見ると聞くとは大違い。キョトンとしました。鏡に映してみるご本人は、どうしても点が辛くなるのでしょう。シリコン挿入直後は腫れもあります。やがて乳輪乳頭を作製し、落ち着いた完成品になると、『本物味』が増します。それを見せてもらった時は、もう感激しました。Xさんのこれまでの迷いや哀しみに触れてきたせいか、美しい仕上がりに顔がニコニコしてしまいました。

『の』の字の移植が完成するまでの術式は、やはり厳密なものです。採取したあとの健側も綺麗に遺すために、かなり細かく縫います。抜糸の段階でも、糸が残らないよう何回かに分けての処置でした。優れた形成外科のDr.は妥協できない芸術家でもあるのだな、と改めて思います。ちなみにXさんは乳頭も健側からの移植でした。

 

このようにコラムをアップして良いでしょうか、とXさんに内容を打診したところ、状況の変化を伝えてくれました。前述の通り、シリコン挿入直後のXさんは左右の違いにもの凄く落ち込みました。一方、ドクターは「そんなことは無い、綺麗に出来ている」と主張していたのです。ところが完成後の診察では、ドクターの方が左右の大きさの違いをしきりに気にしていました。逆にXさんの方では不思議と気にならなくなったそうです。《何故でしょうか?(笑) やはり自分の分身を移植したせいでしょうか? 愛おしくて文句など言えません(笑)》せめて乳輪乳頭だけでも自前のものを、との願いが叶った結果、起こった心境の変化でしょうか。興味深いことですね。

詳しく知りたい方は、是非、サロンにいらして下さい。

Xさんは次回のサロンにも参加される予定です。4月14日(土)、14時から。群馬県立図書館の3階です

私の経験が誰かのお役に立つ事が出来たなら、こんなに嬉しい事はありません》――― Xさんの言葉を結びとしましょう。

 

以下、雑感です。

サロンにいらっしゃるのはこの世的に鍛錬された女性が多いようです。おかげで楽しい雰囲気ですが、もしかしたらその雰囲気が初参加の人の哀しみをブロックしてしまい、その人は辛い本音を話す機会を逸しているのではないか、と心配になります。サロンの数日後、電話を下さったある女性が、「あの時は前向きを装っていたけれど、実は1人になると涙があふれ出して、自分を叱咤しても泣き止むことが出来ない、一体全体どうしたことなのか」と話していました。どうしたことか? それが普通なんですよ。

涙を止めようとしないで、自分を存分に泣かせてあげて下さい。私は枕に顔を押しつけて、動物のようにウォーウォー泣いていました。そんな自分を、もう1人の自分が天井の隅で見物しているような気がしてきて、やがて泣くのに厭きて、エヘヘと笑ったりしたものです。似たような経験が皆さんにありませんか? 

少々話題がスライドしますが..........自己憐憫、不幸自慢は多くの人が通る道筋です。しかし一過性であるべきです。愚痴や文句は誰もが口にしますが、度が過ぎるのは困ります。自己憐憫は濁ったぬるい温泉に浸かっているようなもの。不幸自慢は寂しい女王様をいっそう孤独にしてしまうもの。そのような心境から長く抜け出せない人は、一見気の毒ですが、周囲の者の足を後ろから引っ張る、要注意人物です。

 抜け出す努力は本人にしていただきましょう。突き放すしかない事だってありますもの(誤解しないで下さいね。特定の方を想定して書いていることではありません。正直のところ、かつて自分自身がその穴に陥っていた時、友人から恫喝され、我に返ったものです)。

環境は大事だと歳を重ねるにつけ、思います。人は周囲によって変えられてしまう弱いものです。これから友人を作るなら、努力上手な、楽しい苦労人を選びましょうよ。

実は、『シャロン前橋』発足当初から、物心両面で支えて下さったが、肝臓の難病で亡くなりました。享年74歳。容赦ない手厳しい目線を持ち、かつ、熱い深いフトコロの女性でした。彼女を友人に持てたゆえ、亡くなった今も勇気を与えられています。自分もいつか誰かにとって、そのような友人になれたら、と願っています。

積雪のあと、一気に桜の季節に変わりました。


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