『乳がん市民フォーラムin深谷市』に行って参りました。






『第16回 乳がん市民フォーラムin深谷市』に行って参りました。


〔NPO法人 埼玉乳がん臨床研究グループ〕が、毎年一回、埼玉県内を移動して、乳がん患者のために最新知識を提供している催しです。
乳がんの病理や、がん患者の心の痛みをどうコントロールしてゆくか、などのテーマを、最先端の研究者達が患者レベルでわかりやすく説いてくれる、行き届いたフォーラムでした。 700人余りの入場者だったと聞きます。
以下はランダムなメモに、感想を交えて記したものです。

 
  ここ数年、芸能人の乳がん闘病が話題になっているおかげで、一般の興味は深まっているものの、あやふやな思い込みが流布されています。また、突然、乳がんを告知され、冷静になれないままに、がんの切除+同時再建がベストなのか、と患者は迷いつつも決断を迫られます。

社会生活に揉まれ、見かけはとてもしっかりした冷静な女性が増えてきました。それでも『こころ』は原始の頃から変わらない、一人の弱い人間です。告知されたら頭が真っ白になるのは当たりまえのことです。

それでも告知から2週間もすると大方は落ち着いて来るようです。

乳がん、再建について基礎知識を固めるのに良い一冊は、2016年版(今のところ最新)『乳がん診療ガイドライン』です。

患者の心をそそる「100パーセント治る」とか「がんと闘うな」などをうたった情報は避けて通るに越したことはありません。

 
「手術は医師にとっては日常的なことだが、患者さんにとっては一生に一度のこと」それを肝に銘じて治療にあたっているという、ドクターの言葉は重く響きました。 

 
  乳がんと再建の総論をお話された久保和之ドクターは、形成医のキャリアが長く,その後、乳腺外科に転身して研鑽を積み、さらに再建の形成医に戻り、重層的に腕を磨いてきた異色の医師です。

乳腺外科医は「再建してはいけない」という決まりがあります。しかし、がんの切除と同時にエキスパンダーを入れるのだけはOK.というのは不思議な矛盾ではないでしょうか。エキスパンダーの入れ具合で、再建のお胸の出来不出来は大きく変わってくるのですから。

あるシリコン再建のベテラン医師は、エキスパンダーの入れ方を見て、「さすがは○○ドクター」と感心していました。従って「よくもこんなひどい入れ方をしたな」という場合もあるに違いありません。

会場からの質疑応答がなかったのは残念でした。外科手術と再建のコラボレーションについて、お聞きしたかったです。

 
 軽快な語り口の矢形寛ドクターは、治療の副作用を過度に恐れることはない、とユーモラスに説きました。

【抗がん剤治療中のタブー :よくある誤解 】

 
 なま物を食べてはいけない → 嘘

これから抗がん剤治療にあたる方、吐き気で何も食べられなくなる,と心配しないで下さい。ただ、逆に体重が増えすぎて良いことは、何もないです。

 
(抗がん剤治療中を思い出すと、食欲のあるときはお醤油をたっぷりつけたマグロやイカのお寿司、冷たいお蕎麦がもの凄く美味しかったです。味の濃い,冷たい物が欲しくなるのが特徴でした。お握りだったらホカホカのものより、冷たい塩にぎりです)

  
 倦怠感で辛いときは、あまり動かない方が良い →嘘

 
  散歩は気分転換になります。

(これにも覚えがあります。ベッドから起き上がるのが億劫なときは、ゴロッと身を落とすようにして床に転がり出ました。化粧してウィグを付けて歩き出すまでが、長い戦いでしたが。当時、マックの100円コーヒーを飲みながら読んだのは、ホスピスの先駆けをつくった柏木哲夫、難病から奇跡の生還を遂げた柳澤桂子の本でした。いわゆる、生きる知恵、死ぬ術を説いたもので、現在、浸透している言葉でいえば『がん哲学』本です。生涯にまたとない、深い読書体験でした。)

 

 抗がん剤という毒を体に入れたら、もう妊娠出産は望めない → ○△× 

 
  これは嘘とも本当とも言えない微妙な問題です。

妊娠中に乳がんが発覚し、「中絶してきました」という患者さんがいます。どんなに辛い事だったでしょう。でも早まらないで下さい。妊娠中もある一定期を過ぎれば、おなかの赤ちゃんを護りながら,抗がん剤治療は可能です。

(私の知人は30歳代前半で、乳がんを罹患。トリプルネガティブでした。抗がん剤治療を終えて半年もしないうちに「医者からストップをかけられていたんだけど、出来ちゃったんですよね」と困っていました。しかし月満ちて生まれたのは玉のような健康な赤ちゃん、そして2年後には無事に第二子を出産されました。彼女は初め、聖路加で卵子を冷凍する方法も調べていたようですが、あえて自然に任せる選択をし、その結果のことなのです。楽観的なことばかりを、ここに並べるつもりはありません。ただ、乳がんに罹ることも、その後子供に恵まれるか否かも,すべてはその人の担っている運命なのだと思うのです)

 
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休憩時間にはピアノの生演奏の贈り物です。

朝露に濡れたシャクヤクのようなドレス、豊かな笑顔が印象的なピアニスト、小山里巴さん。親しまれているショパンやリスト曲が緊張をほぐしてくれました。

贅沢を言わせてもらえば、普通ではあまり聞けない小品が一曲入っていれば、さらに新鮮でした。パンフを見てその曲目を確認し、CDショップに探しにゆくのも、聞き手の楽しみです。音楽は生きる喜びそのものですね。

 
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  皆さんは『精神腫瘍科』という言葉をご存知でしょうか? がん治療の患者さんの心のケアをする診療科です。精神腫瘍科を持つ病院は、国内にまだまだそう多くないようです。演者は大西秀樹ドクターでした。

がんの治療を始めて一年以内にうつや適応障害にかかるのは、患者の約50パーセントを占めるそうです。精神腫瘍科では即刻、薬を出すとは限りません。じっくり患者の話を聞き、認知行動療法,集団精神療法を行っています。

ここにも『がん哲学外来』に重なる思想があるようです。 

 
  併せて、思いを打ち明けられる患者会やサロンは大事な場所です。

『NPO くまがやピンクリボン』の活動については聞いていましたが、本庄児玉支部で無料の茶話会を開いているのを初めて教えていただきました。

毎月第三木曜 10時~12時 本庄はにぽんプラザにて

参加費は無料、出入りは自由だそうです。時間を作って、いつか伺いたいと思います。

ラウンジでスタッフの方と乳房再建について立ち話できたのは,わずかな時間でしたが、大きな収穫でした。

 
  ネットワークの案内を通して参加した患者さんから、「今日は勉強になり、また前向きになれた気がします」とメールをいただきました。知識を得ることは自信に繋がり、また自分の経験や思いを語ることは、エネルギーを生むと思います。



私自身は10年前に右乳がんを全摘し、その5年後に自家組織で再建しました。告知されたあの日、雨降りなのに傘を忘れて帰ったこと、手術日までの2週間、毎朝、泥水に浸かったような思いで目を覚ましたことなど、ありありと思い出されます。今、心身の健康を取り戻して仕事が出来るのも、10年の間、このような勉強の機会に足を向け、励ましていただいたお陰です。


 
  この催しは16年続いています。16年のうちには薬の事情も保険適用も大きく変わってきたはずです。その都度、最新の情報をあらゆる角度から患者に届けようと、埼玉県内の施設を転々とし、フォーラムを開いてきた〔NPO 埼玉乳がん臨床研究グループ〕のご努力は大変なものだとお察しします。埼玉県民の皆様はお幸せですね。


資料も充実していました。


以上、行きつ戻りつの不十分な内容ですが、おさらいをかねて報告とさせていただきます。


来年は埼玉県のどちらの市で開催されるのでしょうか? 埼玉から参加されているシャロン前橋のNさん、情報を仕入れたら、また是非、教えて下さい。
「乳房再建ネットワークシャロンm」HP http://charon.webcrow.jp

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