リンパ浮腫の予防に毎日使っています 「ドクターメドマー」

右乳房を全摘手術し、同時に腋のリンパ節を18か所、廓清したのが10年前のことです。強烈な抗がん剤もホルモン療法も経験しました。それらの治療の副作用は、今では笑いを伴う武勇伝にもなっています。
しかし、一生続くのはリンパ浮腫の心配です。
ピンクリボン運動とセンチネルリンパ生検のおかげで、腋を廓清しないで済む患者さんが増えてきました。それは本当に喜ばしいことです。18か所とった経験者として、この腕のだるさは全くやり切れません。

 乳がんの術後当時は、同室の患者さんたちがぐっすり眠っている明け方に起き出し、仄暗い洗濯ルームでリハビリ体操に励みました。おかげでパンパンに腫れていて右腕はすぐ元に戻り、腕は不自由なく挙がるようになりました。患側で重いものを持たないよう気を付ける以外、不便は感じなかったのですが、何が困ったかといえば、夜です。手術した方の腕がだるく重くはばったくて、どんなに疲れていてもなかなか寝付けないのです。

 リンパドレナージについても調べましたが、この時間と根気のいるマッサージを、疲れ切った一日の終わりに毎日実行できる人がいたら素晴らしいと思います。
バスタオルを畳んだ上に腕を置き、10センチ高くして寝れば楽だと聞いていましたが、その程度の事では解消されず、ベッドサイドの壁に釘を打ち、そこから垂らしたスカーフで腕を縛り、吊るしたまま眠ったこともあります。起きた時には体が冷え切っていて風邪を引きました。
 
 そんな苦しみから解放されたのは『ドクターメドマー』(日東工器㈱)のおかげです。商品名をそのまま掲げていますが、私は宣伝マンではありません。
皆さんは手術の麻酔から目覚めた時、両足に着いていた空気圧を加える大きな長靴のようなマッサージ器を覚えていますか? あれと同等のものです。片腕用に作られ、家庭で使用できるようアレンジされたのが、私が愛用している市販の通称メドマーです。
その機器を知ったのは、故山口真理子さんの著書『乳がんはなぜ見落とされたのか』(朝日新聞社刊 2004年)でした。彼女はリンパを34カ所廓清していました。浮腫を発症した真理子さんがメドマーを毎日使い、こんなに気持ちが良いなら、予防のために早いうちから使い始めればよかった、という意味のことを書いていたのを、私は思い出したのです。
 
 当時読んだ乳がん関連本の巻末に、業者さんの案内がありました。電話を一本入れると数日後に東京の東村山市から群馬まで、メドマーのサンプルを持って駆け付けてくれたのです(現在では日東工器(㈱)メドー事業部が同機器の販売に当たっています)。
ここで、実際的な情報を記します。10年前の購入価格は、10万円に若干のおつりが来るくらいでした(残念なことに未だ保険適用されていません)。
営業さんは注意事項を丁寧に教えてくれました。誤って使うとかえってリンパ節を痛め、危険だからです。

・一日一回、10分間、それ以上は使わないで下さい。
・圧は <1>から<5>まであります。浮腫の予防や、だるさの解消なら「2」で十分です。くれぐれも濫用は避けて下さい。
・ご利用者は眠る前に横になってから使用し、気持ちがいいのでそのまま寝てしまうことが多いようです(私もそのまま寝てしまいます)。
 その場でサンプルを使ってみてあまりの快適さに、車に搭載されていた新品を買いました。以来、10年間ほとんど毎日使ってきました。

 最近はセンチネル生検のみで、腋の廓清を免れている患者さんが多く、再建サロンでも浮腫の悩みをあまり聞いていませんでした。けれどセンチネルだけでも、油断すると浮腫を起こす恐れはあると聞きます。

 ここに初めて書くのは、私が最近、リンパ浮腫寸前までいった経験からです。
実は、メドマーを壊してしまいました。というのも足がだるかった時、試しに腕用のアームバンドを足にはいてみるという、愚かな事を自分がしたからです。本体からアームバンドをつなぐホースの付け根が裂けてしまったのです。プシュウと空気が漏れて効果が無くなりました(そんなことがなければ、このマッサージ器、10年使っても問題無しの優れ物、ということになりますね)。
大金を積んで買い直すことになるのか、困ったなぁ、とそろばん弾いて悩んでいた矢先、牛糞と苦土石灰を庭に撒く、という作業をするはめになりました。勤務先の花壇の植替えです。病気をして10年も経っていると「患者です」という顔をしていられませんし、華奢なパートの女性が一人で重い袋を抱えているのを見ていられず、つい手伝ってしまいました。重い袋を抱え、引きずり、行ったり来たり。
その夜、「ああ、メドマーが使えたら」と輾転反側しました。翌日、とうとうパソコンを使えないほどに右腕が重くなり、これはいよいよ浮腫が出るな……。ゾッとして検索をかけると、上位にヒットした販売店は、なんと群馬県内の太田市にありました。車で一時間足らずです。電話でメドマーの故障の状況を告げると、「部品だけを取り換えれば大丈夫だと思います、一式持ってきてみて下さい」と言われ、上司に頭を下げて半日休をもらい飛んでゆきました。

 その結果、店頭でホース部分を取り換えただけで済みました。かかったのは8000円と消費税だけです。そんなに安く済むならもっと早くに修理すればよかった、というのが実感です。

 正直のところ、このブログを書いている今も、右腕は次第に重くだるくなってゆきます。一生付き合わねばならない症状です。私にとって、乳がんの後遺症と仲良くしてゆくために必要なのは、心通う患者仲間、本やパソコンなどの情報源、そして、このメドマーです。三種の神器です。

 お店は町の電気屋さんといった趣で、閑静な住宅街にありました。清潔な店内でご主人と四方山話をしていると、奥様が熱いコーヒーを煎れてくれました。
乳がん治療、乳房再建の症例を重ねている群馬県立がんセンターと同市内にあるのは心強いことです。 
10年前に購入した時は、メドマーを勧める業者とリンパドレナージの施術者がまるで互いを認めず、宿敵のような関係でした。乳腺外科医さえメドマーの使用に良い顔をしなかったのは、素人判断で使って悪化させてしまう例があったからでしょう。
時代は変わりました。今ではリンパドレナージについて詳しく解説した本に、併せて使うと便利なマッサージ器として紹介されています。

次のシャロン前橋の街角サロンは定期開催のとおり、H29年、2/11(土)午後2時から4時半まで(場所はHPでご確認下さい)。そこにメドマーをお持ちします。興味のある方はご試用下さい。メドマーは予防のためだけではありません。リンパ浮腫の治療にも使われています。
ただし、現在リンパ浮腫を起こしている場合は、圧の程度や使用時間を専門家に確認していただきたいので、その場での試用は見合わせて下さいね。術後間もなく、十分に傷が癒えていない方も、見学のみでお願い致します。

 先に挙げた販売店は太田市飯塚町の『九合電気(くあいでんき)』さんです。お店の承諾をいただき、ここにお名前を掲載しました。
リンパ廓清と浮腫で悩む方達のお役に立てるよう、願っています。

 「乳房再建ネットワークシャロンm」HP http://charon.webcrow.jp



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