乳房再建シリコン~エキスパンダーから乳頭作成までの全過程~
『シャロン前橋』のレギュラー:Oさんの乳房再建は、全摘後、シリコンによる二次再建、医療機関は東京都品川区の『ブレストサージャリークリニック』、I先生とは岩平佳子先生のことです。
再建手術の綿密な記録を、その都度ブログに寄せていただきました。痛みや出血については、苦しい時を凌ぐと忘れてしまうものです。タイムリーなメモは貴重です。
<手術翌日>
先日,主治医との信頼関係ができているから,回復が早いのでしょうと言われて、自分でも気付かなかったけれど,とても納得しました。
< レポートの全編に、ライフスタイルの断面を切り取ったような瑞々しい生命力があふれていて、再建は独自のストーリーなのだと改めて感じます。
平成 25年12月 左乳房全摘手術
平成 27年8月 エキスパンダー挿入手術
平成 28年5月 シリコン入替手術
平成 28年7月 刺青にて乳輪作成
平成 28年9~10月 乳頭作成(完成)
記事の閲覧数がとても多いので、全過程を通読できるようにここにまとめ
ました。
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【H27 8月 エキスパンダー挿入手術 】
<術前一週間>
いよいよ来週。セコムの保険に入っていますが、ダメ元でと加入しているアフラックに連絡してみました。
ガンの治療の時に給付とあるので,おそらく無理と思っていたら、再建手術一度のみ適用するとのことでした。
再建が保険適用になったおかげですね。ありがたいことです。
夫がチェックアウト午後2時というクリニックの近くのホテルに予約してくれました。
手術は10時からで、一時間ほどで麻酔から覚めて,その10分後にはトイレに行くそうです。
どんなに長い人でも術後1時間で帰宅となるそうです。
びっくりするほどの早さです。疲れているようならホテルで一休みできることになりました。
夫の配慮に感謝です。
入院もしないため,荷物もないし,とても気楽に望めそうです。
仕事を前日までするので,ほとんど忘れているのですが、気付けばあと一週間です。
皆さん、しっかり再建しているのだから,とても心強いです。
では また。
術後に連絡します。
手術直後(友人からの伝言メール)
術後でパソコン操作が大変そうとの事で、
Sさんに報告メールを送ってほしいって伝言されました。
Sさんに報告メールを送ってほしいって伝言されました。
朝が早いので前日に品川のホテルに宿泊
当日、午前9時に病院へ入り、エキスパンダー無事終了。
すでに健側より若干大きくなっているそう(笑)。
術後1時間以内にクリニックを出ないといけなかったそうです。
クリニックからホテルまでタクシーで戻り、
ご主人の車で群馬へ帰ったそうです
当日、午前9時に病院へ入り、エキスパンダー無事終了。
すでに健側より若干大きくなっているそう(笑)。
術後1時間以内にクリニックを出ないといけなかったそうです。
クリニックからホテルまでタクシーで戻り、
ご主人の車で群馬へ帰ったそうです
<手術翌日>
経過報告です
昨夕からまるで胸の中に金属板が入っているような違和感と,乳房の下がむくみ,鬱血して変色してました。
内出血するけれど,数日でなくなるから心配ないと説明を受けていました
翌朝が一番痛くて,手術するんじゃなかったと思う人が多いと先生から説明です。でも抜糸までにはよくなるそうです。
なるほど,体位を変えることはできず,ずっと仰向きに寝てるしかありませんでした
でも動かなければ痛みはほとんどありません。
6時間おきの痛み止めは座薬が即効性があるとのことなので
3日間は使うつもりです。
起きているのは辛くないです。
抜糸までは肩より上に手をあげないほうがよいと言われました。
夫は今の状況も楽しんでいるように見えるよ、だって。私は必死なんですけどね。
エキスパンダーにはすでに180ミリリットル入っています。容量は250ミリリットルとカードに書いてありました。
スモールサイズですね。
読書はできそうなのでうれしいです。
<術後2日>
痛みは当日から翌日がピークで,抜糸の頃には軽減。10日後にはほとんどなくなるそうです。
お産の痛みは10時間ですっきりしましたが,こちらは時間がかかりますね。
でも動かなければ痛まないので大丈夫です。
痛みは寝起きの時が一番あります。
術後の発熱もありません。
ただ鬱血でむくみがあり,とてもブラジャーはできません。
ユニクロのブラつきの下着,抜糸後に着られるようになるといいなと思います。
どうぞ皆さんによろしくお伝えください。
シャロンに参加できた時にIドクターのお話などしたいと思います
★ ★ ★ ★ ★
手術受ける直前にIドクターから術後3日はとても痛いですからね。
特に翌朝は手術したことを後悔される人が多いけれど,抜糸には皆さん元気で来るからと言われたことが,自分の励みになりました。
そこまでの痛みではありませんが,体位を変える時や歩くときに痛みがあります。
明日の抜糸が楽しみです。10日経てばほとんど痛みがないとのことです。
術後すぐにドクターから夫に「きれいに手術できましたよ」と言われたそうです。
とてもうれしい言葉で,今は少し腫れていますが,きっと落ち着くだろうと思えます。
講演会,セカンドオピニョン等自分なりの過程を通して,この先生ならば、と思えたことが大きいですよね。
これもラッキーなご縁でした。
今日は術後初めて運転しましたが 大丈夫でした。
左胸だったおかげで,包丁も胸にはひびきません。
掃除機はまだかけませんが 日常生活ほとんどOKです。
遠いと思う東京通院ですが,行き始めたら結構楽しんでいます。
他に寄るところが今のところありませんので,湘南新宿ライン等の各駅電車で,グリーン席を利用しています。たっぷり読書の時間が確保できるのがうれしいですね。
<術後5日>
明日、抜糸です。早くお風呂に入りたいです。シャロン前橋の皆さんに会えるのを楽しみにしています。
<術後6日>
本日無事に抜糸をしました(17針ありました)
まだ内出血と絆創膏のかゆみで痛々しい乳房ですが,初めて膨らんだ胸をみてとてもうれしく思いました。
この感激は一度乳房を失った人にしかわからないでしょうね。
運動制限は特にないそうです。フィットネスもOKとのこと。
でもまだ怖いですよね
歩くと痛みがありますが,それは内出血によるものとのこと。
入浴して血行がよくなれば,すぐに良くなると言われました。
クリニックは完全予約制で,時間より少し早めに着いても全く待つことがありません。
それもありがたいです。
Nさん同様夏期休暇を利用して,手術したので,職場には一部の管理職に話しただけです
病休をとらずにできるなんて,ありがたかったです。
これで一段落しました。次は一ヶ月後にお水を入れます。
続 く
続 く
【 H28年 4月~5月 シリコン挿入手術 】
4月16日 術前の血液検査と、手術の説明(ナースより)
「シリコン入替え手術はエキスパンダー挿入よりずっと楽です」とドクターから言われているので、とても気楽に説明を受ける。
でも、手術承諾書には1%以下の確率で『1.感染 2.出血 3.シリコンの回転』のリスクが記載され,『最悪の場合は再手術』とある。
また、乳がんを切除した段階で、患部の皮膚の厚みはそれぞれ違ってきているため、無事に再建が完遂されたとしても、再建乳房は硬さ、大きさ、形態、対称性の面で、健側と完全には同じにならない。その点を理解したという確認を、文書で求められた。
私はこれまでに講演会に足を運び、本を読み、インプラントでは元通りにならないことを理解した上でこの術式を選んだことだし、ある程度の妥協が必要だと思っている。
エキスパンダー挿入術の時はとてもブラジャーはできなかったが,今回のシリコン入替え手術の直後はナイト用ブラジャーを付ける必要がある、とのこと。ガーゼ等で覆われた胸を固定させるためだ。
ドレーンを外した後は、あまり動き過ぎないことを前提に、仕事に復帰してもよいとのこと。
《手術のスケジュール》
5月3日 シリコン入替え手術
5月5日 ドレーン管外す
5月11日 抜糸(初めは10日抜糸だったが,仕事の都合で延ばしてもらう)
抜糸後は、通常の生活に戻れるとのこと。フィットネスクラブも再開できると言われる。しかし運動はシリコンの回転に影響しないのかと疑問が残る。次回ドクターに聞いてみよう。
《実体験:経過の報告》
5月3日(ゴールデンウイーク後半の初日) 10時来院、11時手術の予定。
昨年8月6日にエキスパンダーをいれてから9カ月。予定通りに手術日を迎えた。
品川に前泊し、早めに来院する。普段は完全予約制のため,他の患者さんに会うことはほとんど無かったけれど,今日は待ち時間が長かったため,多くの患者さんがいることがわかった。中には待合室で泣きながらナースに話をしている人もいた。希望に沿わなかったのかな、と考えてしまう。
本日の手術は4人で私は2人目。リカバリー室でマークをつけてもらう。この手術で全身麻酔の手術は 卒業だと思うと,感慨深い。
手術について麻酔医から話を聞く。麻酔方法については一長一短あるというが、岩平先生の手技は手早いから、挿管しない麻酔が使えるとのこと(手術時間が長い場合、やはり挿管しなければ安全にはできないのだ。麻酔の影響、リスクは小さくないので、挿管しなくて済むのはありがたい と思う)。
手術室に入ると、横たわった頭の位置に、写真があるのが目についた。私の患部を三方向からとった写真だ。再建乳房は健側よりも少し大きめで、膨らみが出てしまうと事前に説明をうけているが、それでもどんな仕上がりになるか楽しみだなあと思う。そのうちに麻酔が効いて意識をなくした。
手術時間は予定通り30分だったそうだが,リカバリー室で時計をみると12時。11時に入室したので,一時間経ったことがわかる。麻酔医に尋ねると途中で何度も身体を起こし、位置を確認したとのこと。「きれいに出来ていましたよ」と言われ安堵する。
エキスパンダーを入れたときのような,金属板が入った痛みは全くなく、傷口がピリピリするような感じ。帰りは新幹線の指定席をとり,遅めのランチをすませてから乗車。特に耐えられない痛みはなくて、ほっとする。
5月5日 ドレーン外す
痛みは術後翌朝までに峠を越した感じ。痛み止めの薬は夜中に座薬を入れたのが最後だった。それより,テープにかぶれてかゆくて仕方ない。抜糸までは下半身しか入浴できないのもしんどい。
ドレーンはとても小さな管で、脇に備えたガーゼに出血していた。
初めて見る術後の胸は予想以上のきれいな出来映え。やわらかな胸になっていた。
時間が経つとやや小さくなるとのこと。エキスパンダーのままでも自分は居心地がよかったとドクターに話すと、外科医の中には「シリコンに入れ替えなくともエキスパンダーのままで良いのでは」という人もいる。けれど、そのままではMRIはできないし,保証期間もわからないとのこと。
ガン告知から2年6カ月。今日までのことを振り返り,改めて再建を決断し、実現出来てよかったと思う。
リスクはあるけれど、自分にとっては後悔のない選択だったと思う。
エキスパンダーは250ミリリットル。インプラントは240ミリリットル。小さな乳房だから楽なのだと思う。
ドレーンを外してから抜糸までがとても大切な時期で、その間に無理をすると熱を持ったり、その後の被膜拘縮につながりかねないとのこと。やはり油断大敵なのだと改めて理解した。
明日から慎重に家事、仕事をしようと思う 。
抜糸は10日の予定。仕事で一日延期しようと思ったが、それでは糸が残ってしまうし,その後,テープを貼っても効果が薄くなってしまうとのこと。仕事を優先させようと思ったのは軽率だった。抜糸を一日ずらすだけで、見目が悪くなるのだ。ここまできれいにして下さったドクターの気持ちを大事にしていなかったこと、今の自分にとって何が一番大切なのか、自覚が足りなかったことを反省した。
5月6日 職場復帰
術後4日目。抜糸前なので無理のない範囲で、という条件で職場復帰。痛みはほとんどない。それよりもテープかぶれと暑さで湿疹ができてしまい、かゆみがしんどい。早く抜糸して、心置きなく入浴したい。
手術のことは上司と仲の良い同僚にしか話していない。その同僚からエキスパンダー挿入術の痛みを「10」とすると、今回はどれくらいの痛みかを問われ、「3」と答える。上司は感染が心配だから,無理しない範囲で仕事をするようにと配慮してくれた。
5月10日 抜糸
術後1週間。抜糸してガーゼがとれて、テープだけになる。柔らかくて温かい乳房に何度も手を触れる。今夜からは入浴もできる。
日中はブラジャーを必ず着けて固定しておくこと(どんなブラジャーでもかまわない)。運動制限は特になし。シリコン回転の原因はわからないので,特にこうした方が良というのはない。
一ヶ月後の検診の予約と乳輪刺青の予約をする。乳頭は健側から移植し再建する方法を採る。立ち上げ(スターフラップ)もできるが、ドクターもナースもオススメはできない、健側からの移植のほうがきれいに仕上がるとのこと。真夏を避けて9月以降とする(乳頭の再建後、二週間は入浴できないので、真夏は避ける人が多いようだ)。
ゴールが見えて,あと一息。
新しい乳房を大切にしていきたいと思う
★ 再建を決意したのは,大好きな山歩きをした後に、気兼ねなく温泉に入りたいという気持ちだった。でもエキスパンダーをいれて膨らんだ胸を見たとき,単純にうれしかった。そしてシリコンに入れ替えた今,着たいと思う洋服をためらわずに着られるということがとてもうれしい。
続 く
【 H28年7月〈刺青方式〉 乳輪作成 】
7月2日(土)
いよいよ「乳輪乳頭の作成」。乳房再建も最終段階となった。
本日、ドクターは不在でクリニックは閑散としている。今日の来院はナースで対応できる患者さんだけとのこと(岩平佳子ドクターのクリニックでは、乳輪の刺青はナースの仕事である)。
まずは乳輪のデザイン。丁寧に位置を決めて写真を撮り、確認する。これを慎重に2度行い、刺青する乳輪の場所を決定する。
麻酔は思ったほどの痛みはなくて、ほっとした。
後日の乳頭の再建は、健側からの移植方式に決めてある。乳頭に麻酔する時、痛みは強いとのこと。そのため全身麻酔を希望する人も多いとのことだけど、手術は15分で終わるので、やはり局部麻酔がベストだと思う。移植した乳頭は縫い付けるだけではなく、神経をつないで再建するので、当然ながら喫煙の習慣はリスクを高める。タバコを吸う人は手術の一ヶ月前から禁煙するように言われるが、私は喫煙してないので大丈夫!!)
さて、乳輪作りの刺青は、歯をけずるような機械を大きめにしたもので、皮膚に傷をつけながら色を入れていく。20分くらいで終了。痛みは感じなかった。麻酔液のおかげで出血は少ないけれど、数日間は出血するという。入浴はかさぶたができるまで禁止。シャワーも二日間はガーゼを濡らさないように注意すること。かさぶたができるまで、抗生物質の入った軟膏を塗り、ガーゼでカバーするよう指示される。
刺青の処置中にナースと雑談。
・乳房再建後のブラジャーはワイヤーのあるもので、しっかりと補正をするほうがよいと勧められる。エキスパンダー挿入術の時は,痛みもあるしブラジャーはしなくてもよいと言われたが,シリコン挿入術ではナイトアップブラジャーを術後すぐに装着。その後は特に指定はなかったが,ブラジャー装着を勧められた。ワイヤー入りのブラジャーは再建をしたほうではなく、健側が垂れるのを予防する目的とのこと。
・同時再建する人のほうが増えてきた結果、再建した乳房にどうしても欲がでてしまって、無理難題を言われることも多く、クリニックは困っているそうだ。二次再建と違い、喪失感がない人は、左右対称に出来あがって当然だと思うのだろうか。
帰宅後ひりひりとするようなわずかな痛みがあったけれど、たいしたことはなかった。
7月3日(日)
少し痛みを感じるとガーゼから出血がしみ出て、下着にまでついてしまった。
もう一枚ガーゼをあてようかなと思ったけれど、乾燥してきたのでそのまま様子を見ることにする。
7月4日(月)
初めてガーゼを外してシャワー。ガーゼを外すと出血とともに、刺青の色がたくさんガーゼについていた。色落ちしちゃうのではと不安。でも初めて鏡に映った乳輪は左右対称で瓜二つ。
乳頭が浮き出ているような塗り方で、これなら乳頭再建しなくても、遠目ならわからない。温泉に入るのもこれなら抵抗ない。おそらく他人が見てもわからないだろう。このままでもいいかな、とさえ思う。乳輪再建してよかった。
7月16日(土)
乳輪再建から2週間。かさぶたが周囲から中心に向かって、半分くらい剥がれてきた。かさぶたがとれた乳輪は健側のそれと比べるとやや濃い色。時間が経過するとともに薄くなるとのこと。乳頭の再建後、再度、色をつけて仕上げるという。
数年後、薄くなった乳輪に刺青を行う人もいる。特に温泉に行く前に刺青する人が多いそうだ。
※ちなみに刺青費用は初回216,000円(税込) 2回目以降は2,000円+税。保険適用外なので高額である。これも医療行為として認めてもらえればと思う。それでもシリコン再建が保険適用になったことだけでも、改めてありがたい、と感謝です。
(乳頭作成は別料金。健側からの移植は自家組織を用いるので、保険適用になるので3万程度、とのこと)。
-----費用は自由診療のため、病院によって差があります。-----
続 く
【 H28年 9月~10月 乳頭作成 】
9月17日
今日、いよいよ乳頭を作る。健側の乳頭を移植する手術だ。
・平成25年12月に乳がんで左乳房全摘。
・27年8月にエキスパンダー挿入術
・28年5月にシリコン入替術
・同年7月に刺青で乳輪再建
・そして9月、ようやく今回の手術が最終で、乳房再建術が完了となる。
乳がん切除、エキスパンダー、シリコン挿入、と今まで3回の手術は全て全身麻酔だったが、乳頭移植は初めての局部麻酔だ。
手術台に上がってから,消毒も含めて手術の準備など医療チームの声もが全て聞こえる。自分で選んだ乳頭移植手術だったのに,健康な乳頭を切り取ることに抵抗感がぬぐえず、土壇場になって、「やっぱり止めたい」という心の声が聞こえてくる。
緊張感と恐怖心がピークになったところで、岩平先生の入室。
「局部麻酔は痛いのは2秒なので,その間だけ我慢してくださいね。手術は15分で終わりますよ。話はしていてかまいませんよ」と言ってくれる。
確かに麻酔は痛かったけれど,針生検の痛みに比べればたいしたことはなかった。
そう先生に話すと、「皆さんそう言いますね。おそらく針生検は癌かもしれないという不安な気持ちがさらにそのような痛みを増長させるのかもしれません。乳腺外科は乳房を切り取り、患者さんが元気をなくすけれど,私たち形成外科は再建して患者さんに喜ばれ、元気にさせるからおいしいところをもらってますね」と雑談しながら、あっという間に乳頭を切り取り、欠損部を縫い上げていくことがわかる。
そして移植側へ。かかった時間は確かに15分だった。
局部麻酔は身体へのダメージがないので,手術台から降りて、身支度を整えて終了。
両胸に当てられたガーゼは2週間後の抜糸まで絶対に濡らすことは厳禁。ぬれると壊死してしまう。私は皮膚が弱くてテープにかぶれてしまうので、痛みよりもかゆみとの闘いだなあと思う。
帰りの電車で切り取られた乳頭が痛み始め、さらにもう片側が痛くなってきた。ほとんどの人が痛み止めは服用しないとのことで、もらった痛み止めは一錠だけ。がまんできないほどの痛みではなかったけれど、就寝前に服用。
朝には痛みはなくなった。
健康な乳頭にメスをいれることに最後まで抵抗感があった。「でもそのほうがきれいな乳頭が作れるので、オススメします」というドクターの言葉で決心した。健康な乳頭に申し訳なさがある。でも万一、健側に乳がんができてしまって、全摘することになったら、移植した方の乳頭が生き残るっていうことだなと思う。そのように見方を変えたら気持ちが楽になった。
9月24日
移植手術から一週間後、ガーゼ交換のために通院。本当は抜糸までこなくてもいいと言われたけれど、皮膚が弱いので、かゆみ止めの軟膏を塗ってほしかったために受診した。
ガーゼを外して初めて見た乳頭。切り取られた方はちょっと小さくなっちゃったかなと感じる程度。
移植した方は糸がたくさんついていたけれど,皮膚にくっついているだけでとても頼りない。「これって壊死してるのでは?」と不安になった。けれど、ドクターは「ではまた来週、抜糸になりますね」と言っただけ。
濡らしてはいけないというプレッシャーと、二週間お風呂に入れない不自由はかなり大きい。下半身浴は血行が良くするので、傷が生々しい間はしないほうがよいと言われている。シャワーで下半身を洗い、洗髪するだけ。背中やお腹はタオルで拭くのみ。
「2週間は長いから皆さん、夏は避けますよと言われたので、9月中旬を選んだ。確かに正解だったと思った。これ以上涼しくなるとシャワーだけでは寒くて身体が冷えてしまう。
乳頭移植は春か秋がオススメです。
10月1日
ようやく抜糸。2週間は長かった。抜糸した乳頭はやはり皮膚にくっついているだけで頼りない。これから一ヶ月間はスポンジで乳頭の周りを保護してブラジャーをつけることになる。2週間たったら,陥没を防ぐためにお風呂で乳頭をつまむマッサージをするようにと言われる。
乳頭の手術のおかげで乳輪の刺青が薄くなっている。刺青は抜糸から一ヶ月後の受診に合わせて、再度行うことになった。
久しぶりの入浴。不思議なことに抜糸後頼りなかった乳頭がしっかり膨らんでいた。
乳頭再建の部分は、あらかじめ皮膚に少し傷をつけて、その上に移植するそうだ。すると毛細血管が自然と伸びてきて一体となるのだという。人の身体って不思議だな。
形成外科ってすごいです。抜糸(片側10本ずつくらい)後は,まったく傷口がわからない。三分の一くらい切ったはずなのに、移植した乳頭のほうが大きく感じる。手術したせいで乳輪が薄くなってしまった。だから再度刺青するというのは納得できます。
2年前の11月に岩平先生の講演会でセカンドオピニョンを受けて、再建手術を決断。翌月に初めてクリニックに行ってから通院は19回となった。おそらく来月の受診で治療が終わるからちょうど20回の通院となる。
全てが順調に進んだこと、予約通りに受診できたこと、は自分の体調はもちろんのこと,家族の理解と協力によるところが大きい。それから週末に治療できて(平日の通院は1回のみ)入院もせず、仕事を休まなくてすんだこともありがたかった。
ガン保険に加入していたので,刺青以外は全て給付を受けられたのもありがたかったが、乳房再建が保険適用になっていることは、限度額適用制度が使えるということだ。たとえ生命保険に入っていなくとも、さほど大きな出費とは言えないと思う。治療が始まったのは昨年の8月(エキスパンダー挿入術)で、19回通院したのだと思うと感慨深い。
『おとなの休日倶楽部』を利用し,新幹線は手術の日だけにしようと自分なりの決めごとをして、交通費を節約したつもり。往復の時間はたっぷり読書をして、あとは都内の美術館巡りを楽しんだりできたので、遠距離の負担感はなかった。
治療に対する不安はあっても、治療するたびにきれいな乳房になっていくことが何よりの励みとなった。
再建はあくまでも自分で決めること。十分考えて、信頼できるドクターに委ねることが何よりも大切だと思っています。
11月5日の受診が最終になります。
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以下はOさんより私信として送られた再建完成後のメールです。
H28 9月19日
今は痛みもなくて,テープのかゆみだけです。移植した乳頭がしっかりと根付いてほしいと願っています。
手術中にI先生といろんな話をしました。刺青はとてもきれいにできていますねとナースにもほめて頂きました。
8月に3年ぶりに温泉に入ったことを報告しました。乳頭はまだなくても、乳輪があって本当にうれしかったと。
先生は「乳輪乳頭はだるまの目」と同じだと言ってました。保険が適用にならないことで,再建しない人が多いのがとても残念だそうです。自分の収入がない人にとってはハードルが高いですね。
ここまできて,ふと告知をうけたあのときに戻ったら、どのような選択をするだろうかと振り返ります
絶対に癌だと確信をしていました。夫は再建手術も考えたらと言いましたが,自分は早く手術し,早く仕事に復帰したい気持ちでいっぱいでした。
乳房再建について色々な知識を得た今では,同時再建する自分を想像するけれど、いやこれでよかったのだ、と思えます。
そしてよかったと思えることも,とても恵まれていると思います。
乳腺外科の先生、再建の先生の双方を信頼できること自体、恵まれていますね。
抜糸したら陥没しないためのメンテナンスを教えてもらえるようです。
H28 11月 最終受診日
昨日は通院日。おかげさまで一段落しました。今後は術後一年ずつに検診して,不具合がないか見ていくそうです
もし不具合が生じたら,最大限にできることを考えていきましょうとナースに言われました。
被膜拘縮にならないためには,運動とのこと。水泳でもフィットネスでもいいから胸の筋肉を伸ばすこと。体操でもよいそうです。
(完了)
現在再建中の方にとっては、その進捗や傷の治り具合などを比較するデータになるでしょう。しかしこのように順調でなくても、決して焦らないで下さい。体質にも寄りますし、アクシデントに見舞われたら、そこに何らかの意味を見出しましょう。
「不安に思ってる人の灯になれたら」
今ではOさんご自身がサポーターになり、サロンでふんだんに語ってくれています。
『シャロン前橋』は今年も沢山の方に助けていただきました。感謝の気持ちを抱くことは、人に新鮮な息吹を与えるものですね。
でもそれより以前、小さな家がガタつくほどに慟哭した日々もあったのだと思い出されます。
『シャロン前橋』は今年も沢山の方に助けていただきました。感謝の気持ちを抱くことは、人に新鮮な息吹を与えるものですね。
でもそれより以前、小さな家がガタつくほどに慟哭した日々もあったのだと思い出されます。
何を成すか、ではなく、どのように在るべきか、だ。樋野興夫ドクターのがん哲学外来の言葉が、今、お腹の底ににすとんと納まります。
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