SOG主催 第15回「乳房再建講演会」のご報告
H28 11/5(土)SOG主催『第15回乳房再建講演会』(山梨)に参加させていただきました。会場は甲府駅前の県立図書館、多目的に使われる素敵な近代建築です。
午前の部は乳房再建のドクターや美容ジャーナリストを囲んでのグループミーティング。私は<横浜市立大付属市民総合医療センター病院>の佐武利彦ドクターの輪の中に入りました。
これから再建の人、ただいま再建中の人、再建後の悩みや不安など、それぞれを聞き分ける佐武ドクターの快刀乱麻。患者にしてみれば通常、短時間で2~3万円もかかるセカンドオピニオンを、こぞって受けているという感じです。
以下、講演会や質疑応答の内容を含めて、順不同に抜き書きしてみました。
★ 昨今、乳房再建の医師の実力は「西高東低」に傾いている。関西医科大総
合医療センター:田中義人医師、大阪大医学部付属:冨田興一医師、矢野健二
医師、京都府立医科大:素輪善弘医師など、研究熱心な面々によって再建術
はどんどん改良されている(西方にお住いの方にとっては、お訪ねする先を
具多的に挙げてもらって心強いですが、ドクターに移動は付き物なので、HP
でおおよそ見当を付けたら、電話でドクターの所在を確認することをお勧め
します)。
・10年、20年前に全摘切除した患者も、今から再建できるのか。
★ それだけ時間が経っていればむしろ内傷(うちきず)は治まっているので手術しやすい、歳月は関係ない。
・エキスパンダ―を入れてから、どのくらいで本手術(シリコンや自家組織の入替え)をしなければならないのか。
★
最長3年はそのままで良いと思う。不便があるとしたら、エキスパンダ―挿入中はMRIが撮れないこと。
(言い換えればドクター選び、術式などに迷いがあったら、3年は考える猶予はあるのです。自家組織のために仕事を一か月休むチャンスを三年の間、待つことも出来るでしょうか)
★(佐武ドクターは「申し訳ない」、との思いです)。
同病院所属の武藤真由ドクターは佐武ドクターの再建技術をすべて受け継いでいる。武藤ドクターにお願いすれば、自家組織の同時再建は4~5カ月後に受けられる。同時再建を待つ間にがんが広がらないよう、術前療法を受けておくことを勧める。(漫画家の佐々木綾乃さんは、リュープリン注射:ホルモン治療を受けつつ再建を待ちました。彼女の著書『乳がんでもなんとかなるさ』(文化社刊の漫画)が参考になります)。
・リンパ浮腫に悩んでいる。
★ 再建手術時にリンパ節を移植し、浮腫を改善した例が20例ほどある。相談してほしい。
※筆者は10年来『ドクターメドマー(リンパ浮腫予防のマッサージ器)を愛用しています、後日、別の記事で紹介したいと思います。
・エキスパンダー挿入時は気にならなかったが、シリコンに入れ替えたあと、体全体が不調だ。原因がわからない、病名も定かでない。
★人造物(シリコン)が合わないのではない体質なのではないか。
被膜拘縮を起こした場合、取り出して再びインプラント入れても、同じ結果になりやすい。自家組織を考えるのが良いのではないだろうか。
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・エキスパンダー挿入中にトラブルが起こり、抜去せざるを得ない場合もあるようだが、それはどのような理由か。
答えは、穿通枝皮弁による自家組織移植についての丁寧な説明になりました。推察するに「ドクターの腕が悪い、初めから切除痕が深く、皮膚が足らない、等の理由でエキスパンダー、シリコンの挿入は無理だったのではないか、おそらく診たてが甘かったのだろう」で終わってしまうところを、あえて医療者を批判せず、それとなく自家組織再建を示唆されたのかもしれません。
シリコンが体に合わず、自家組織でやり直して綺麗になった例は少なくない、と遠慮がちに答えたのは、もの優しい控えめな女医、武藤ドクターでした。
・シリコンが向いているか自家組織が向いているか、患者を的確に導いてほしい、患者は自分にとってどんな術式が良いのか知らずに希望を出してくる場合もある。
★それこそ医療者側にとって大切なことだと痛感している。
(この質疑応答は、地元山梨県の再建取り組みの話題の中から出たものです。シャロン前橋の地元にも同じ悩みがあります。医療者にとっては症例を重ねなければ、その患者に何が最良なのか判断は難しいし、人の体には予想外のことも起こり得ます。一日も早く再建を、と急がず、自分の体調や、提案された術式を受け入れる時間が、患者にとっては必要だと感じます)
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“ブラバ、脂肪注入について”
脂肪注入は再建後のくぼみ、へこみに入れるには保険適用できるが、健側の豊胸は自由診療となる。
脂肪が定着するように入れるには技術は難しく、肺に穴があいてしまったり、移植した脂肪が石灰化し、細かいしこりになってしまう場合もある。安易に考えていけない。
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ドクター曰く、「再建術に磨きをかけるには再建手術ばかりしていたのでは駄目なんですよ、視野を広げて色々勉強してなくては」。私がノックダウンされたのは、最後の一言「ボク、あたま悪いよ」というつぶやきでした。いわゆる地位や名声にがんじがらめにされたエリートとは違い、努力に努力を重ねて初めて患者思いの医師でいられる。そのスタンスはこの先も変わらない。私の耳にはそう響きました。
佐武ドクターが「あたま悪いレベル」なら、その枠にまで到底達しない凡人はどうしたら良いのでしょうね? せめてこのような講演会で勉強し、皆さんにお伝えする、それが身の丈にあった努力なのだ、と自分を慰めました。
毎回、SOGの皆様が心を合わせて実現する再建講演会、初めて参加してどれだけ多くのものを得られたことか。久々にお会いできた人達との楽しい談話、最後に手を挙げて「感謝」を口にした参加者に、泣きそうになりながら心の中で拍手したことなど、ここには書き切れません。東京から手弁当で駆けつけた先生方、SOG代表のポーさん、スタッフの皆さん、本当に有難うございました。ひとまず、締めくくります。
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