本田麻由美記者「公開講座」に、思うこと


9月10日のぴあサポ群馬主催の講演会には、患者にとって切羽つまった内容が盛られていました。本田麻由美記者は国内のがん対策や、その政策に関わった患者の在り様をわかりやすく説いてくれました。

一番頭に残ったのは社会保障費が膨れ上がっている今、薬や治療費を無駄にしないよういっそう注意すべきだ、ということで、それは患者サイドの努力も必要だと思います。

※乳がん患者の中にはホルモン療法の副作用が苦しく、飲むふりをして捨てているケースが少なくないのです。

初めの病理検査で、ホルモン療法がどのくらい有効かは判っているはずです。15パーセント、という僅かな効果でも薬が処方されるのですから、副作用が苦しければ医師に相談して、いっそ服薬を止めるべきでしょう。

乳房再建は100万円以上かかる手術ですが、それが保険適用になったおかげで女性の生き方は大きく変わりました。「お金がないから再建できない、こんな体の自分と結婚してくれる男性なんて、きっといない」という悲壮なブログはいつしかネットから消えました。そのブロガー達は今、再建をして希望に満ちた人生を生き直しているのでしょうか。

いや、ひょっとしたら信頼できる医師に出会えず、再建に失敗し、ますます深い穴に陥ってしまっているのではないだろうか、そんなことを思うと居たたまれぬ思いです。

  座談会において「それ」をはっきり口にした後、私は自分の手がブルブル震えているのに気づき、緊張していたことを初めて知りました。

「それ」というのは某病院で、乳房再建する医師が自分で患者を診ること無しに、患者の希望を看護師が聞き取り、手術の日取りをカレンダーに書き込む、という危険な現状についてです。

群馬県内では再建できる病院が限られているため、患者が再建を希望すればその病院を紹介するしかなく、おのずと患者が殺到します。

医療従事者がお忙しいのはわかります。だからと言って、患部の状態も診ずに、シリコンにするか自家組織にするか、お腹から移植するか背中にするか、再建の難しさを知らない患者を相手にとっとと予定を組んでしまって良いものでしょうか。悲劇はすでに起こっています。

一件につき100万円もの健康保険税を費やしながら、患者を悲惨な目に合わせ泣き寝入りさせる結果になっているとしたら、私たちの税金で賄われる社会保障費はその甲斐がありません。

同病院で再建し、とても綺麗に仕上がった患者もいるでしょう。その医師に出会えて幸せだった患者も数えきれないほどいるでしょう。

けれどリスクの明らかな患者にそれを説明せず、自分で勉強しろ、で済ませられるほど、再建手術は軽んじられて良いものではありません。

 私たちは社会の制度に助けられている分、自分に出来ることを、自分に出来る方法で社会に還元してゆくべきです。今回、震えが走る緊張のなか、懸命に訴えたことが、自分なりの還元だった、そう思うようにしています。

  患者が患者のサポーターを務めるには、正反対のベクトルが必要なのだと、今回つくづくわかりました。

最先端の乳がん治療、再建にアンテナを巡らせる一方で、常に原点に戻ること。自分が乳がんを告知され、雨の中、傘を忘れて帰ってきた日のことを決して忘れてはならないと思うし、真剣にサポーターを続けるなら、それは一生かかって習得すべき内容の濃いお勉めです。

この講演会はそのようなサポーターたちによって企画され、実現しました。

 座談会の終わりを締めくくったのは、4年の間に5回、再発転移を告知された男性患者の体験談でした。静かに聞いていた本田麻由美記者が揺さぶられ、ご自分の一番辛かった闘病の頃のことを話してくれた時、この会を催したサポーターたちの努力は、これからも持続して報われてゆく、と実感したことでした。

  Maffさんやあちょさんがブログで広めてくれたおかげでしょうか、会場には思いがけない参加者の姿も見えました。お互い顔を合わせてびっくりしていた組み合わせもあったようです。

この日は私の誕生日でした。あと何年、雨にも負けず風にも負けずに活動できるのでしょうか。

「役割がある限り、人は死にません」とは、私が10年前に乳がんを罹患したとき、手紙をくれた友人の言葉です。彼は今、重い症状で床についています。看病している奥様から、時おり写真が送られてきます。その大きく開いた眼は澄んでいて、健康だったときより物事が良く見えているかのようです。口元は優しくきゅっと閉じられていて、何も言わずとも意志を感じさせる表情です。

彼にも役割があるのです。

乳房再建ネットワークシャロン前橋」HP http://charon.webcrow.jp

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