シリコン入替え本手術:Oさんからの詳細なレポート


 以前にエキスパンダー装着の経過を報告して下さったOさんが、岩平ドクターの元、シリコン再建を無事に済ませ、再び詳細な経験を伝えて下さいました。

4月16日 術前の血液検査と、手術の説明(ナースより)

「シリコン入替え手術はエキスパンダー挿入よりずっと楽です」とドクターから言われているので、とても気楽に説明を受ける。

でも手術承諾書には1%以下の確率で『1.感染 2.出血 3.シリコンの回転』のリスクが記載され,『最悪の場合は再手術』 とある

 また、乳がんを切除した段階で、患部の皮膚の厚みはそれぞれ違ってきているため、無事に再建が完遂されたとしても、再建乳房は硬さ、大きさ、形態、対称性の面で、 健側と完全には同じにならない。その点を理解したという確認を、文書で求められた。

 私はこれまでに講演会に足を運び、本を読み、インプラントでは元通りにならないことを理解した上でこの術式を選んだことだし、ある程度の妥協が必要だと思っている。

 エキスパンダー挿入術の時はとてもブラジャーはできなかったが,今回のシリコン入替え手術の直後はナイト用ブラジャーを付ける必要がある、とのこと。ガーゼ等で覆われた胸を固定させるためだ。

 ドレーンを外した後は、あまり動き過ぎないことを前提に、仕事に復帰してもよいとのこと。

《手術のスケジュール》

5月3日 シリコン入替え手術

5月5日 ドレーン管外す

5月11日 抜糸(初めは10日抜糸だったが,仕事の都合で延ばしてもらう)

 抜糸後は、通常の生活に戻れるとのこと。フィットネスクラブも再開できると言われる。しかし運動はシリコンの回転に影響しないのかと疑問が残る。次回ドクターに聞いてみよう

《実体験:経過の報告》

5月3日(ゴールデンウイーク後半の初日) 10時来院、11時手術の予定。

  昨年86日にエキスパンダーをいれてから9カ月。予定通りに手術日を迎えた。

  品川に前泊し、早めに来院する。普段は完全予約制のため,他の患者さんに会うことはほとんど無かったけれど,今日は待ち時間が長かったため,多くの患者さんがいることがわかった。中には待合室で泣きながらナースに話をしている人もいた。希望に沿わなかったのかな、と考えてしまう。

本日の手術は4人で私は2人目。リカバリー室でマークをつけてもらう。この手術で全身麻酔の手術は 卒業だと思うと,感慨深い。

手術について麻酔医から話を聞く。麻酔方法については一長一短あるというが、岩平先生の手技は手早いから、挿管しない麻酔が使えるとのこと(手術時間が長い場合、やはり挿管しなければ安全にはできないのだ。麻酔の影響、リスクは小さくないので、挿管しなくて済むのはありがたい と思う)。

手術室に入ると、横たわった頭の位置に、写真があるのが目についた。私の患部を三方向からとった写真だ。再建乳房は健側よりも少し大きめで、膨らみが出てしまうと事前に説明をうけているが、それでもどんな仕上がりになるか楽しみだなあと思う。そのうちに麻酔が効いて意識をなくした。

 手術時間は予定通り30分だったそうだが,リカバリー室で時計をみると12時。11時に入室したので,一時間経ったことがわかる。麻酔医に尋ねると途中で何度も身体を起こし、位置を確認したとのこと。「きれいに出来ていましたよ」と言われ安堵する。

 エキスパンダーを入れたときのような,金属板が入った痛みは全くなく、傷口がピリピリするような感じ。帰りは新幹線の指定席をとり,遅めのランチをすませてから乗車。特に耐えられない痛みはなくて、ほっとする。

5月5日 ドレーン外す

 痛みは術後翌朝までに峠を越した感じ。痛み止めの薬は夜中に座薬を入れたのが最後だった。それより,テープにかぶれてかゆくて仕方ない。抜糸までは下半身しか入浴できないのもしんどい。

ドレーンはとても小さな管で、脇に備えたガーゼに出血していた。

 初めて見る術後の胸は予想以上のきれいな出来映え。やわらかな胸になっていた。

 時間が経つとやや小さくなるとのこと。エキスパンダーのままでも自分は居心地がよかったとドクターに話すと、外科医の中には「シリコンに入れ替えなくともエキスパンダーのままで良いのでは」という人もいる。けれど、そのままではMRIはできないし,保証期間もわからないとのこと。

 ガン告知から26カ月。今日までのことを振り返り,改めて再建を決断し、実現出来てよかったと思う。

リスクはあるけれど、自分にとっては後悔のない選択だったと思う。

 エキスパンダーは250ミリリットル。インプラントは240ミリリットル。小さな乳房だから楽なのだと思う。

ドレーンを外してから抜糸までがとても大切な時期で、その間に無理をすると熱を持ったり、その後の被膜拘縮につながりかねないとのこと。やはり油断大敵なのだと改めて理解した。

明日から慎重に家事、仕事をしようと思う

 抜糸は10日の予定。仕事で一日延期しようと思ったが、それでは糸が残ってしまうし,その後,テープを貼っても効果が薄くなってしまうとのこと。仕事を優先させようと思ったのは軽率だった。抜糸を一日ずらすだけで、見目が悪くなるのだ。ここまできれいにして下さったドクターの気持ちを大事にしていなかったこと、今の自分にとって何が一番大切なのか、自覚が足りなかったことを反省した。 

5月6日 職場復帰

 術後4日目。抜糸前なので無理のない範囲で、という条件で職場復帰。痛みはほとんどない。それよりもテープかぶれと暑さで湿疹ができてしまい、かゆみがしんどい。早く抜糸して、心置きなく入浴したい。

手術のことは上司と仲の良い同僚にしか話していない。その同僚からエキスパンダー挿入術の痛みを「10」とすると、今回はどれくらいの痛みかを問われ、「3」と答える。上司は感染が心配だから,無理しない範囲で仕事をするようにと配慮してくれた。

  
5月10日 抜糸  

術後1週間。抜糸してガーゼがとれて、テープだけになる。柔らかくて温かい乳房に何度も手を触れる。今夜からは入浴もできる。

日中はブラジャーを必ず着けて固定しておくこと(どんなブラジャーでもかまわない)。運動制限は特になし。シリコン回転の原因はわからないので,特にこうした方が良というのはない。

一ヶ月後の検診の予約と乳輪刺青の予約をする。乳頭は健側から移植し再建する方法を採る。立ち上げ(スターフラップ)もできるが、ドクターもナースもオススメはできない、健側からの移植のほうがきれいに仕上がるとのこと。真夏を避けて9月以降とする(乳頭の再建後、二週間は入浴できないので、真夏は避ける人が多いようだ)。

ゴールが見えて,あと一息。

新しい乳房を大切にしていきたいと思う

★ 再建を決意したのは,大好きな山歩きをした後に、気兼ねなく温泉に入りたいという気持ちだった。でもエキスパンダーをいれて膨らんだ胸を見たとき,単純にうれしかった。そしてシリコンに入れ替えた今,着たいと思う洋服をためらわずに着られるということがとてもうれしい。 

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術後の自己管理とお仕事の両立に苦慮されているOさんにとって、このレポートは大きな努力の結果だったでしょう。本当にありがとうございました。
Oさんが寄せて下さった「エキスパンダー挿入の経過」(H27年 8/13付 ブログ)と併せてお読みいただければ、再建を予定されている方には、さらに心強いと思います。 
ドクターによって再建の方法、指針は様々です。今、迷いと不安のある再建患者さんが、それぞれのケースを顧みる参考にもなると思います。
※シリコンを入れ終わった後、皮膚が乾燥しがちになるようです。お胸の保湿を忘れずに。


 「乳房再建ネットワークシャロン前橋」HP http://charon.webcrow.jp

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