KSHS第五回全国大会 「充実、脱線の楽しい一日」
病理
マンモの普及によって「非浸潤がん」の診断がかつての4倍に増えている。偽陽性が多いのではないか。「非浸潤がん」はすぐには切除せず、様子をみる方向に動いている。
(真逆の例ですが、この春、術前に電話を下さった患者さんは「非浸潤がん」の診断でした。様子を見るか切除するかで悩んでいたのです。が、思い切って全摘を選び、病理検査をした結果は、かなりの部分、ガンが浸潤していたそうです。マンモの読影は難しいのですね)
乳腺密度の濃い日本人は、マンモと併せて必ずエコー検査を勧めたい。加えてMRIでしか発見できない乳がんも10%ある。(MRIは被爆するし、検査料も高いとあって敬遠しがちですが、昨年、サロンにいらした患者さんは「マンモ、エコー、針精検はすべてシロだったが、3件目の病院でMRIを受け、ようやく乳がんが明らかになった」と話していました)
乳がん新治療
ガンのシコリをラジオ波で焼く、凍結して治療する、などの方法は外国では臨床データが重ねられているが、良い結果は出ていない。
(あるテレビ特集で、数ミリのシコリなら凍結すれば破壊される、手術は不要という理論通りの臨床実験が紹介されましたが、砕かれたシコリ=ガン細胞は乳房内にそのまま残っているわけです。それがまた体温で温められ、ガン活動を再開することはないのか、素人ながら不安が残りました。その手術法を擁護する方では、例えばバラの花が冷凍され、砕かれたあとでが再生不能である、それと同じだ、との主張がありましたが、バラの花と人の体の細胞を同じように考えることが、私にはどうしても出来ません)
いつか手術無しで乳がん治療できる日が来ないものかと切望しています。でも現在の標準治療が定まるまでに、10年かかっているのを思えば、医師が一人一人の患者の病理に従い、一生懸命に考えてくれる治療方法を大事にしたいものです)。
いつか手術無しで乳がん治療できる日が来ないものかと切望しています。でも現在の標準治療が定まるまでに、10年かかっているのを思えば、医師が一人一人の患者の病理に従い、一生懸命に考えてくれる治療方法を大事にしたいものです)。
乳房再建、最前線
・ハイブリット再建(小さめのシリコンを入れて幹脂肪細胞で形を整える)の成果が上がってきている。段差なく、なだらな仕上がり、触れば温かい。ただ幹脂肪細胞がいつまで乳房に留まっているかは個人差あり。「5年経っても留まっている場合がある」とあえて医師が言ったのは、ほとんど5年以内に消えてしまい、再注入が必要ということでしょうか。この手法にも保険適用されれば、嬉しいです。
・再建乳房のインプラントは一年に一回は見てもらってほしい。破損がないかどうかチェックが必要。破損しづらい材質になってはいるが、10年は見守りが必要。何十年も付けていて無事に済んだという例は、今が黎明期ゆえ、まだ無い。
・左右対称にしようと悪戦苦闘するより、インプラントの形に合わせて健側も豊胸してしまう方が容易い。自家組織でも、血管吻合によって健側を豊胸することもできる。
・ブラバでも同時再建が始まっている。ブラバとはカップ状のドームを約一カ月、一晩 10時間装着し、外から吸引してお胸のスペースを作る、毛細血管が増えて脂肪が定着しやすい環境になったスペースへ、臀部や大腿部などから採取した幹脂肪細胞を、数回入れて注入する方法。これで形が整えば、数時間に及ぶ手術も48時間の絶対安静も必要ない。自家組織の移植としては理想的な方法だ。
ブラバの同時再建とは、内視鏡で全摘し、同時に腹部からの幹脂肪細胞を入れて、定着しやすい土壌を作っておくこと。その後、ドームの装着が必要であることに変わりはないが、手術回数が一回減る利点がある。
今は保険適用外だが、今後、先進医療になる可能性が高い。
放射線×再建
・「ガン切除+エキスパンダー挿入」の後、放射線をあてることがある。その場合、シリコンに入れ替え、完成してから照射するのが良いエキスパンダーに水を入れている状態で、放射線をかけるのはダメ。照射するならきちっとシリコン挿入を済ませてから、とのこと。今のシリコンは上から放射線をあてても安全、かつ治療面でも有効。(素人の心配ですが、その後、被膜拘縮が起こる可能性があるのではないでしょうか)。
無論、自家組織の場合でも、移植が済んでからの放射線治療になります(自家組織移植後に放射線をあてた例は実際に見ていますが、とても綺麗でした。このあたり、今後の症例が待たれるところです)。
・切除後、何年経っていても再建は可能だ。だが、放射線をかけたことがあるなら、注意が必要。はるか昔に放射線をかけたケースでは、線量がわからない。どのようにかけてあるか、不明なのが問題。医師、病院に確認し、クリアーにしてほしい。
どちらかと言えば放射線治療後の再建には、自家組織を勧めたい。
どちらかと言えば放射線治療後の再建には、自家組織を勧めたい。
・予防医療
聖路加病院ではアンジーのような「予防切除+再建」を希望、実施する患者さんが年に数人いる。予防医療も保険適用に望みをかけている。
そのスライドは昨年の大会でも見せられました。両側を乳がんに侵され、片側を自家組織、もう片側をシリコンで再建した患者さんの上半身です。
自家組織の側は、私自身の症例と同様、皮膚が薄くてエキスパンダーを入れられなかったのでしょうか。腹部の皮膚をお胸に移植したのかもしれません。修正で傷を薄くし、全体の形を整え、乳輪乳頭を作って完成となるのです。しかしスライドは修正前の段階でした。当然乳輪乳頭もありません。痛ましい傷も残ったままです。
かたや、南雲ドクターの施術の側は、一次一期再建でシリコンを入れ、乳輪乳頭も完成したすっきりしたものでした。
これはフェアではありません。
南雲ドクターの持論は「お腹の脂肪で再建したとしても、もう片側がガンになった時、今度はどこから移植するのか。佐武ドクターなら体中の脂肪をもって来られるというが、それでは満身創痍になってしまう。傷が増えるばかりではないか」。さらにスライドモデルとなった患者自身に聞いてみると、「両方シリコンで作っておけば良かった」と言っていた、という流れなのです。
しかし乳房再建とは 美観のみで判定できるものではありません。シリコンという異物を体内に抱えて何を思うか、それは施術した医師ではなく患者自身の問題です。短時間で完成すれば、その時点でシリコンは楽だ、と患者は思うでしょう。けれど自家組織の場合は時間を経るにつれ、温かく柔らかなお胸を取り戻せたことが永遠の喜びなのです。
満身創痍とは失礼な。私は脂肪を採るのに腹部を180度以上切開しましたが、傷は綺麗に治っています。
また、シリコンを入れたくとも、皮膚が薄く、異物を入れることが適わなかった患者もいます。逆に自家組織を使いたくとも、仕事や家庭の事情で一ヶ月の休暇をとれない患者もいます。
そのスライドだけを見せられ「会場の皆さん、どちらを選びます?」と聞かれても???
「自分のやり方なら一日4件やってのけられるんだ」と言われましたが、再建手術はチャンバラではありません。その日、KSHSの会場に赴いた患者の目的の大半は、自分のライフスタイル、現状に合った再建法を見出すことにあったのではないでしょうか。
佐武ドクターは、他の医師の立場を配慮し、控え目に最新のブラバ技法を説いていましたが、対する南雲ドクター、闘魂むき出しで吠える様はまさに万年青年。『なぐちゃん』、あなたって可愛い。
さて、本題に戻ります。
このセミナーの楽しいところは、メインホールで講演会が催されているのと同時にスモールミーティング(再建乳房の体感会や美容の相談など)が開かれていることです。参加者は自由に行き来します。講演の休憩タイムに体感会をのぞいてみると、完成した乳房を披露しているのはほとんどが南雲ドクターの患者さんでした。
若くてスタイルの良い、キャリアウーマン風のモデルさん達は、皆、魅力的でした。ほとんどの人が患側だけを再建するのではなく、あえて健側にも修正を加えて豊胸していました。本当に綺麗です。しかし着物を着る時など、お胸にさらしを巻いても平らにならない、等、詳細を聞くことはさすがに憚られます。
自家組織の患者さんが一人いらっしゃいました。紡錘形の豊かなお胸を取戻し、ニコニコしている60歳代のその女性、とても表情が良かった。両側を自家組織で作り、48時間の安静に耐えたことも大きな自信につながっているのでしょう。
「直情・即刻」の私のこと、エイ、飛び入りで見せちゃおう、とその場で脱いで、再建準備組のモニターさん達に、自家組織の温かさ、柔らかさをお伝えしました。そこへ通りかかったのが6月シャロンmの応援に駆け付けて下さったSさんです。『お願い、あなたも見せてあげて』と引っ張り込んでしまいました。Sさんは佐武ドクターによる同時再建、私のような皮膚移植の痕もなく、どちらが患側なのか、見分けがつきません。
再建準備組の患者さん達の反応は冷静でした。「『ここを残して切らないと、綺麗に再建できないんだよ』と南雲ドクターはおっしゃるけれど、ガンは出来るだけ広範囲に切除した方が良いのでしょう? 私は虎の門で手術したけれど、切除は切除、きちっと治療するように言われたんです」と淡々と感想を漏らしていました。
今日の講演の一部を鵜呑みにされる心配はなさそうです。
「自分も短時間で済むシリコン再建したかったのです。でもリンパに転移が多くて、切除範囲も広かったから、南雲先生の手技で再建するのは不可能でした」と申し上げた私の心情を、いちばん適確に理解して下さったのは、シリコン再建の女性でした。
講演会に戻ると、指名された医師が「南雲先生、再建は患者さんそれぞれの事情によって方法を決めるものですね?」と、噛んで含めるように話しかけていました。「そうですね」と我に返ったご様子の南雲ドクター。
大切なのはシリコン、自家組織の患者会、サロン等が双方、手を携えて密になることです。それこそが多忙で有能な医師達に、患者の思いを伝える、最善の方法なのではないでしょうか。
「乳房再建ネットワークシャロンm」HP http://charon.webcrow.jp
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