「近藤理論を黙認できない」 ワット・隆子さんも

私はあけぼの会のニュースレターを毎回楽しみにしています。この春の「AKEBONO NES」137号はいつにも増して読み応えのあるものでした。新たに承認された抗がん剤や、治療の背景にあるこの世の動きなど、乳がんにまつわるニュースは、ここから入手するものが一番正確で、最新なのではないかと思います。病気についてある程度の知識を持っている患者さんにこそお勧めしたい、突っ込んだ内容の冊子です。
 
 その冊子に、乳がん放置を勧める近藤誠ドクターへの警鐘がありました。
ここ数年、近藤ドクターの信奉者(患者)があいついで亡くなっています。亡くなる寸前まで書き付けていた手記も出版されています。彼女達が死に直面しても尚、新興宗教の開祖のように、近藤ドクターを信頼している様子はけな気ですが、その余命は、ドクターの持論のように安らかではありません。激痛に耐えかねて最後は抗がん剤を使っているのです。「標準治療を受け入れて早くから抗がん剤を使っていたら、もっと早くに死んでいた、だから悔いは無い」という主張は、痛々しいほどです。
彼女達が達観できたのは、「整理はついた、これ以上生きていても意味が無い」とはっきり言える生活環境だったからです。生きて守りたいもの----それが夢であれ、愛情であれ、任務であれ----、のある女性が、真似て良い「死に様」ではないと思います。

手術はいやだ、切るのが恐い、という程度の思いを乗り越えられず、口当たりの良い近藤理論に落とし込まれてしまった女性はどうしたら良いのでしょう。その救済のために、あけぼの会会長のワット・隆子さんも動き始めました。「『抗がん剤は効かない』」の罪」(毎日新聞社刊)の著者、勝俣範之ドクターは、手遅れになった患者を泣き寝入りさせないために、無料で裁判を支援する弁護士を紹介しています。ワットさんは勝俣範之ドクターに全面協力し、「被害者の会」を作ってはどうか、と検討されています。

先のブログでも取り上げた近藤ドクターの新刊『近藤誠の「女性の医学」』ですが、乳房再建の側面から読んでも、大雑把すぎる内容でした。シリコンと筋皮弁による方式しか紹介されていないのです。穿通枝、ブラバにまったく触れていません。筆者はご自身の理論を裏付けるに都合の良い資料にしか目を通していないのではないか。私でさえ、不信を抱きました。

近藤ドクターは「医療幻想を突き崩せ。手術や新薬を偶像のように崇拝するな」と繰り返し主張してきた方ですが、まるでご自身が、崇拝されるべき偶像に成り代わってしまったかのようです。

 ワットさんにお会いしたのは数年前、それも一度だけなのですが、そのお人柄に私は強く惹かれました。自分がこの人の厳しさを真似ても冷淡になるだけだな。優しさを見習っても甘くなるだけだな。頭の良さを装ってもピエロになるだけだな、と何となくわかってしまいました。
ワットさんには特有の多面性があり、それがための歯切れ良い命令調です。一方で『まがいもの』をバサバサと切って捨てる感覚が、痛快です。
「乳がん患者に身障者の資格を与えろ」という権利意識や、「人気の政治家を呼んで講演会をしたらどうか」という軽いノリを一蹴し、再発乳がんで亡くなった患者を悼んで録音したという「おっぱいの歌」を売り込もうとする男性シンガーを即刻シャットアウトする。
 そのワットさんが近藤理論の被害者たちのために、動き出しています。

次回の「シャロン前橋」の街角サロンは6月13日(土)午後二時から、前橋市朝日町のケアホーム愛(まな)の家の交流室にて。場所がわかりづらい方は090-6023-7026にお電話を。
ピアサポーターの主催するがんサロンは5月17日(日)午後一時から、前橋会場はシャロン前橋と同じです。予約、参加費不要です。

「乳房再建ネットワークシャロンm」HP http://charon.webcrow.jp














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