再建の手術痕を、ケアする「良品」

 完治した傷痕を保湿し、ストレスから守るのは、体全体に影響する大事なケアです。

「穿通枝」の脂肪を採取したお腹には、両脇までぐるりと真一文字の傷が付きます。
皮膚と脂肪と血管を楕円形に採り、その跡をギュウッと寄せて分厚く縫合するので、水やりのホースをまき付けたようになります。けれど再建手術からまる三年経って、私の傷痕はわからないほど綺麗になりました。縫合してくれた医師の腕のさることながら、自然の治癒力はすごいものです。 

 唯一の違和感は、薄く伸びたお腹の皮膚が、冬の空気の乾いて、パンパンに張ってしまうことなのです。
 冷えと乾きは絶対に避けたいので、常にバッグに忍ばせているのが保湿用のオイルとホカロンです。
 先日、一部の患者たちに良く知られているオイルを使ってみました。
 125mlの大瓶が3000円ちょっと。オレンジ色の筆記体「ioilが目印で、ドラッグストアや病院の売店で手に入ります(通称バイオイル)。化粧品はチフレ、服はユニクロ、の自分には安くもない値段ですが、傷痕のみならず顔から足先まで全身をカバーできるのが魅力です。
 
 昼休みにも化粧室で、お腹をマッサージ。良く伸びてなじみ、評判どおりの一品でした。
 これから再建する全摘の傷痕にも、良いことでしょう(傷が完治してから、使用可です。ご注意下さいね)。
 例えば、放射線をかけた皮膚は焼土のようなもので、再建に向けてこまめに保湿し、肥沃な土壌にしておくことが感染症を防ぐ秘訣だ、と言われています。そして再建した後も忘れずに面倒を見てあげるのが大切だそうです。

 「皮膚と心」という太宰の短編がありました。
 ひどい皮膚病に見舞われた女性が、自分の慎ましい半生をなぞり、哀しみに浸ります。結婚相手への不満、不公平な人生への憤り。気弱だった夫はベソをかく彼女を労わり、意外にも男らしく変貌してゆきます。そして町医者にかかった途端、皮膚病はあっさり治ってしまうのです。足取りも軽く家路につく彼女は、夫にかけられた「嬉しいか」の一言にはにかみ、ささやかな幸せを噛みしめます。
 ただそれだけのストーリーなのに、忘れられない一篇でした。

乳房再建ネットワークシャロン前橋HP http://charon.webcrow.jp
第六回街角サロン: 11月29日(土)午後二時から 
              ケアホーム愛(まな)の家 前橋市朝日町4-5-5


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