乳がん患者の妊娠出産

 10月12日の上毛新聞にインタビュー記事「(乳がん)早期発見の利点周知を」が掲載されました。上毛のY記者はいつもながらきちっと下調べしてくれているので、記事のポイントをどこに絞るかあらかじめ話し合い、無駄のない取材になります。

 インタビューで強調した早期発見の利点は、① 全摘せざるを得ない場合でも、早期なら放射線をかけずに済むので、綺麗に乳房再建できること。② 若くして罹患しても妊孕性(にんようせい)=「妊娠、出産の可能性」を保てる、の二点でした。

 妊孕性という耳慣れない言葉をあえて載せてもらったのは、このキーワードによって検索エンジンをかければ重要な情報を得られると思うからです。

 以下は、字数の関係で誌面に載らなかった内容です。

 私の知人のお姉様、Xさんは30歳前半、新婚で罹患。地元の病院で乳がん切除術を受け、その後の補助療法は、都内の聖路加病院に通院したそうです。一年の抗がん剤治療、一年のホルモン療法、そして一年の無治療期間を置いて妊娠し、この秋、無事に出産されたのでした。今は育児に奮闘中です。輝くばかりのニュースでした。2030代で罹患するケースが増えている一方、そのような喜ばしいケースは現在、確実に増えつつあります。

 抗がん剤治療を受ける前に受精卵や卵巣を凍結する、などの方向性について、カウンセリングを受けられる医療機関は多くはありません。またそれらの「処置」には保険が適用されません。 

そして、どのような過程で妊娠、出産したとしても、再発のリスクはあります。その後に何が起こるかは、神様に委ねつつ精一杯生きるしかなのです。

 出産率の低下、少子化問題がクローズアップされていますが、赤ちゃんを産み、育てたい、と願う若い乳がん患者達の訴えは、心を強く打ちます。不妊に苦しんだ女性の記録は、旧約聖書のアブラハムの妻、サライにまで遡ります。

 祈り叶い、授かった新しい命を、大事に、謙虚に育ててゆく仕事が、太古の女性から引き継がれていることに、私は畏怖を覚えます。
  けれど一方では間逆の例も見てきました。授からない現実を受け入れ、赤ちゃん支援センターから7カ月の子供を引き取り、愛情を注いで育てているご夫妻がいます。やんちゃな坊やは、早3歳、目を輝かせて紙飛行機を飛ばし、キャッキャッとママに抱きついている姿を、先日見かけました。

自分の血を分け、お腹を痛めた子供でなければならないのだろうか、愛情に飢えた子どもは今、この世に溢れているのに。そんな感想を持ったことでした。

 あまりに重い、個人的な問題です。答えの出ない問いかけをそのままに、今回の投稿を終わります。
 
      乳房再建ネットワークシャロン前橋HP  http://charon.webcrow.jp

次回の街角サロンは11月29日(土)午後二時から。
来年から偶数月の第二土曜、午後二時から、の定期開催になります。

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