サロン運営の、真の目的

  非凡な芸術にも、地道な仕事にも共通していえるのは、多くをやりこなさなくては、実力も自信も身につかないということです。

　書家は一枚の作品を仕上げるために、300枚くらいの清書用紙を反古にします。歌詠みも染色家も、無駄な試みが無駄には終わらない点で、同様と言えましょう。
  営業マンも、税理士も、初めから仕事のえり好みをしていたらお客さんは付きませんし、信頼も得られません。

  では、彼らが成功したとして、それは何によって証明されるのでしょうか。
「何とか賞」の表彰状や、オフィスを大きくして見栄えがよくなれば世間は認めるでしょうか。

  真の成功は、彼らが育てたお弟子さんや、部下の質によって決まるのだと思います。

　その道の大家は、次の世代に引き継いでも尚、豊かな人材を生み出してゆきます。大切なのは、お弟子さんや部下の数ではなく、優秀な人材を育てるノウハウを、しっかりと伝えてゆくことではないでしょうか。

「ノウハウ」を獲得するのは容易なことではありません。セカセカ歩き回って色々なことを試み、失敗して笑われて、先を見つめてまたむっくりと起き上がる、そういうことを繰り返してきた人達に限られるようです。
　その人たちには見えるのです。後続がどんな悩みを抱えていて、心の筋肉をつけて力の裾野を広げるために、今、何を教えてあげればいいか。

　何か事を起こそうとすれば、必ず逆風の吹く世の中です。でも、その道の方向が間違っていなければ、雑音はいつか静まるものです。

　患者会やサロンが活動を続けているのは、そのような組織を作ろうという思いを、育ててくれた「患者の先輩」がいたからでした。
　サロンの運営は、感謝の連鎖です。
「自分もいずれは人を助ける役に回りたい」。
　サロンを続ける真の目的は、そのような言葉に出会うことかもしれません。