闘病力と、一人旅


  先に紹介した佐々木綾乃さんが漫画のあとがきに「闘病には、一人旅をするのと同じノウハウが必要だ」という意味のことを書いていました。
 その通りだと思うので、以下、私なりに一人旅のコツを振り返ってみました。
 ① 必要最小限のものをパッキングする(実はこれがとても大事で、登山もパッキングが上手に出来ればベテランと言わています。何が欠かせないかを熟慮し、準備万端、かつ身軽な荷造りを)。
 つまり人間関係、仕事等を取捨選択する。
② 乗り物の便を調べ、安全な遠回りか、険しい近道か、その旅の目的にあったルートを、大雑把に定める。
 すなわち、全摘か温存か、再建するなら一期か二期か、シリコンか自家組織か。そもそも自分が何を望んでいるのかを再確認する(ただし、厳密な予定を組んでそれに捉われ過ぎると、遭難の恐れあり)。
③ 出発までに、絶対に素晴らしい旅をして無事に帰ってくる、との意志を固める(迷いがあって気が進まないと、その旅は不思議とトラブルを招き寄せるらしい)。
 人に勧められて再建するのではなく、自分が本当に望んで手術を受けるのだ、とテンションを高めてゆくことが大事です。それが出来ないなら再建を急ぐのは危険です。
 
「旅は靴ズレ、夜は情けない、渡る世間は鬼ばかり」の常套句が浮かんでくる日もあることでしょう。
 でも目覚めた時には、朝陽に輝く海が窓いっぱいに広がっていた、という感動もあるのです。
 三回目のシャロンmで再建体験を話して下さったさんは、やはり若い頃、ザックをしょって何週間も一人旅した人でした。
 彼女は乳がんを疑われた時から「絶対に再建する」と決めていましたし、シコリに触れるなり「こりゃ大きいわ」と声を上げる失礼な医師に見切りをつけて、セカンドオピニオンで遠くの名医を探し当てました。
 術前抗がん剤の副作用がマックスになる周期をつかみ、そこに仕事の休みをあてて職務をまっとうし、無事に手術(全摘+エキスパンダー挿入)にこぎつけたのです。
 しかしその後は順調ではありませんでした。
 シリコン入替えの数週間前に、薄く伸びた皮膚に穴が開き、エキスパンダーが露出するというアクシデント。でも、たまたま手術のキャンセルが入り、形成外科医の手が空いたのです。その上、彼女のサイズに合うシリコンの予備があり、本手術を早めることが出来ました。
 
 
 幸運だったのは偶然なのでしょうか。
 彼女の「闘病力」が、運を引き寄せたように思えてなりません。
 
 
 シャロンmでさんの綺麗なお胸を見て、「再建に向けて闘志が湧いた」という参加者がいたのは喜ばしいことでした。

 こんなふうに書くと乳がんを乗り越えるのは世慣れたスーパーウーマンばかりか、と思われるでしょうか。でも、がん告知を受けた日の衝撃や、手術の前夜、恐ろしさにしくしく泣いたことは、誰にとって忘れられません。
今、人生が自分に何かを求めている。闘病という「一人旅の道」が備えられ、その向こうに何かが待っている。
何を求められていたのかは、当人が旅から無事に帰って、初めて見出せるものなのです。

 本やネットで肩と目がコリコリになってしまったら、スマフォを置いて荷を詰め、バスや列車に乗って一人旅をおさらいをしてみませんか

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